税務と法務の接点

税理士業界にフォーカスした“税務と法務の接点

第1回 憲法から考える税法解釈と民法等私法の関係

 租税法の中には、その言葉の意味について、租税法の中で規定されていない言葉が多く使用されています。
 実際の裁判では、その言葉の意味の解釈が争いになる場面もあります。
 しかし、租税法上にその言葉の意味について規定がされていなくても、民法等の私法に規定があるものが多数あります。例えば、「相続」、「贈与」、「扶養」等があげられます。

 これは、いわゆる「借用概念」と呼ばれるもので、一般的に租税法の中で、意味が与えられていない言葉について、民法等の私法の中に同じ言葉がある場合には、租税法解釈上も、私法と同じ意味で解釈すべきというように考えられています。
 なぜ、そのように考えるのか。

◯憲法第30条(納税の義務)
 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

◯憲法第84条(課税の要件)
 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

 以上のように憲法は、「租税法律主義」を規定しています。そして、租税法律主義の主な機能は、国民の経済生活に対する法的な安定性と予測可能性(不意打ち防止)の確保にあります。
 ある言葉の意味を、私法では別の意味で解釈されているにもかかわらず、租税法においては、別の意味に解釈するとなると、この租税法律主義の主要な機能である国民の法的な安定性と予測可能性を失わせてしまう(不意打ちになる)ということになります。
 この憲法の要請を維持するために、租税法と民法等の私法では、同じ言葉は同じ意味として考えるということになり、もし、同じ言葉を他の意味で解釈したいのであれば租税法という法律で定める必要があると考えられているのです。
 つまりは、民法等私法の解釈が租税法の解釈においても大きな影響を与えることになるのです。