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第37回 事務所拡大に向けて事業戦略を再構築する その5

 株式会社ooyaビジネスクリエイトの大谷(おおや)です。

 先週、自身のインプットのためにある外部研修に参加してきました。主催したその会社は、売上25億円、社員数100名で、現在は新卒を中心に採用を展開しており、昨年は1万5,000人のエントリーの中から9名だけ採用したそうです。

 今や人気企業で、各種ランキングでも上位に掲載されています。

 ですので、採用担当者も当然若い人を登用し、ある担当者はまだ25歳でした。

 その彼に、セミナーの中で、ご自身が就職活動していた際の体験談も含めて話をしていただいたのですが、その彼が言ったのは「どこの会社の採用面接に行っても、会社側は『エントリーしてきた新卒を見極めよう』とする。それは当然のことだとは思うが、応募する新卒からすれば極めて不愉快なことである。応募者がその会社のトップから聞きたいのは、

・その会社が何を目指し、どうなって行こうとしているのか?
・その際に自分たちがそこで何をし、どういうキャリアを描いていけるのか

である。」と話されました。

 これを聞いて、「なるほどそうかもしれないし、極めて本質を突いた指摘だなあ」と思いましたが、同時に「いい人材が来ない」と嘆いている個々の会計事務所に目を移して見ると、まさに彼の指摘のように、『その事務所が何を目指し、どうなって行こうとしているのか? その際に応募者がそこで何をし、どういうキャリアを描いていけるのか』を全く示していないことに気づかされます。

 このレポートでも触れて参りましたが、良い人材を欲する前に、事務所のビジョンを明確にすることの方が先決のようです。


■事務所拡大に向けて事業戦略を再構築する その5

 前回は「ターゲット顧客を明確にして、新規開拓にも力を入れましょう」と書きました。今回は会計事務所の商品についてです。

 近年、多くの会計事務所が厳しい外部環境に対応しようと、

1.年一決算や会社設立を入口にして、小規模企業の獲得に努めたり
2.紹介会社その他からの紹介客に対し、料金を下げて価格で勝負したり

低価格路線に乗った形で新規を獲得されていますよね。

 私はそれを悪いとは思いませんし、たとえ低価格でも、ある一定割合で継続的に獲得することは「所長先生の精神的な安定のため」にも極めて有効なことであると思います。

 ただ、低価格の顧問先獲得を事務所経営の柱にしてしまうのは、事務所戦略的に適切ではないと思いますし、職員の疲弊と離職にもつながりますので、そのためのシフトをしっかりととっている事務所以外は「ある一定割合」にとどめるべきであると私は考えます。

 また、顧問料の減少をカバーしようと、経理代行や給与計算といった「アウトソーシング業務の領域」や「保険の手数料収入」に走る事務所も多いかと思いますが、それらは税理士の本来業務ではないので、どう考えても「他資本や他業界からの参入組」と競争することになりますので、そこを事業の柱としてしまうのは中期的に考えると、あまりお勧めできません。

 ですので、私は、今こそ会計事務所は会計事務所の強みであり、本来業務である、

1.記帳代行(自計化含む)
2.申告業務(決算申告・相続税申告等)
3.税務相談(但し資金繰り・節税対策・事業計画等をメインとした会計顧問)

のうち「3」の質で勝負すべきだと思いますし、この「3」をしっかりやることが税理士事務所の価値であると思います。

 そして、この「3」に満足したお客様が新たなお客様に「いい先生だよ」と紹介下さったり、この「3」を行う中で、保険が売れたり、事業計画ニーズが出てきたりするものだと思います。

 ですから、保険や事業計画を、売上をつくるために「売る」という姿勢でなく「3」をしっかりと行う中で「結果として売れてゆく」という発想・思考に変える必要があるでしょう。

 仕事柄、私は様々な業界のライフサイクルが今どこなのか? を常に考えておりますが、成熟期を過ぎて衰退期に入ったかどうかの一つの基準は「新たな技術革新があるかどうか」に置いています。

 そう考えると税理士の本来業務の価値を高めること=技術革新 を放棄し、周辺業務に走ることは、業界的には末期現象のように思います。

 ただ、業界全体と個々の事務所の業績は別物なので、勝ち残りを目指す先生方は、これからも本来業務でイノベーションを起こし、しっかり勝負して行きましょう。