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寡夫控除の所得金額要件は憲法に違反しないと控訴審も判示

 年間所得金額を500万円とするいわゆる寡夫控除の所得金額要件を定めた所得税法2条1項31号が憲法14条1項に違反しているか否かの判断が争われた事件で東京高裁(中村也寸志裁判長)は、納税者側の主張を斥けた原審の(東京地判令和3年5月27日判決、令和元年(行ウ)第236号)判決内容を支持、寡婦控除には所得要件が設けられていないのに対して寡夫については所得要件を設けられているのは合理的であるとして納税者側の主張を悉く斥け、棄却した。

 この事件は、父子世帯の父親が寡夫に該当することを前提に寡夫控除を適用して確定申告をしたところ、原処分庁が合計所得金額500万円以下の所得要件を満たさないことを理由に適用を否認の上、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をするとともに、過去年分も寡夫控除の適用ができるとして更正の請求をしたことに対しても更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたのが発端となった。

 そこで納税者側が所得税法2条1項30号イの「寡婦」にはない所得要件を設けているのは性別による差別であるから憲法14条1項に違反し、所得要件に係る部分は無効であるとして所得要件を満たさずとも寡夫控除を適用すべきであると主張して、更正処分のうち申告額を超える部分及び賦課決定処分並びに通知処分の取消しを求めて提訴したわけだが、東京地裁は所得要件を満たしていない原告に寡夫控除が適用されないことを前提にされた更正処分及び通知処分は適法であると判示して斥けたことすら、納税者側原審判決の取消しを求めて控訴したという事案である。

 控訴審で納税者側は、所得が同じで性別以外の条件が同じであるにもかかわらず、性別によって離婚後の課税額が変わる場合、その区別に正当な理由がなければ不平等な扱いであり、税法上の規定が母子世帯を父子世帯よりも優遇するものであれば、離婚の際に親権や養育権を母親に誘導する可能性を否定できない。最高裁昭和60年判決の問題点、憲法24条の法意及び最高裁昭和36年9月6日大法廷判決を踏まえると、その区別には、1)性区別の目的に正当性がないか、あるいは2)処分時点において具体的に採用された区別の態様に目的と関連性がなく、他の法律等により実質上の不平等が生じないように立法上の配慮がされていない場合は不合理な差別であり、憲法24条2項にも違反するなどと主張したが、納税者側の請求はいずれも理由がないと判断して、原審同様、棄却した。

(2022.01.12東京高裁判決、令和3年(行コ)第166号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 年間所得金額を500万円とするいわゆる寡夫控除の所得金額要件を定めた所得税法2条1項31号が憲法14条1項に違反しているか否かの判断が争われた事件で東京高裁(中村也寸志裁判長)は、納税者側の主張を斥けた原審の(東京地判令和3年5月27日判決、令和元年(行ウ)第236号)判決内容を支持、寡婦控除には所得要件が設けられていないのに対して寡夫については所得要件を設けられているのは合理的であるとして納税者側の主張を悉く斥け、棄却した。 この事件は、父子世帯の父親が寡夫に該当することを前提に寡夫控除を適用して確定申告をしたところ、原処分庁が合計所得金額500万円以下の所得要件を満たさないことを理由に適用を否認の上、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をするとともに、過去年分も寡夫控除の適用ができるとして更正の請求をしたことに対しても更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたのが発端となった。 そこで納税者側が所得税法2条1項30号イの「寡婦」にはない所得要件を設けているのは性別による差別であるから憲法14条1項に違反し、所得要件に係る部分は無効であるとして所得要件を満たさずとも寡夫控除を適用すべきであると主張して、更正処分のうち申告額を超える部分及び賦課決定処分並びに通知処分の取消しを求めて提訴したわけだが、東京地裁は所得要件を満たしていない原告に寡夫控除が適用されないことを前提にされた更正処分及び通知処分は適法であると判示して斥けたことすら、納税者側原審判決の取消しを求めて控訴したという事案である。 控訴審で納税者側は、所得が同じで性別以外の条件が同じであるにもかかわらず、性別によって離婚後の課税額が変わる場合、その区別に正当な理由がなければ不平等な扱いであり、税法上の規定が母子世帯を父子世帯よりも優遇するものであれば、離婚の際に親権や養育権を母親に誘導する可能性を否定できない。最高裁昭和60年判決の問題点、憲法24条の法意及び最高裁昭和36年9月6日大法廷判決を踏まえると、その区別には、1)性区別の目的に正当性がないか、あるいは2)処分時点において具体的に採用された区別の態様に目的と関連性がなく、他の法律等により実質上の不平等が生じないように立法上の配慮がされていない場合は不合理な差別であり、憲法24条2項にも違反するなどと主張したが、納税者側の請求はいずれも理由がないと判断して、原審同様、棄却した。(2022.01.12東京高裁判決、令和3年(行コ)第166号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2023.09.25 16:11:39