太陽光発電に係る取組みは事業には該当しないと裁決
太陽光発電に係る取組みが事業所得を生ずる事業に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、大規模な太陽光発電設備を取得しておらず、自宅屋根に設置した太陽光設備から生じる売電収入も減価償却費に満たない小規模なものであるから、営利性及び物的設備に乏しく、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務ということができないため事業には該当しないと判断、棄却した。
この事件は、不動産の賃貸及びボウリング場の経営等を目的とする法人の代表取締役等を務める者(審査請求人)が、太陽光発電への取組みに係る損失の金額を事業所得の金額の計算上生じたものとして所得税等の確定申告をしたのが発端となった。この申告に対して原処分庁が、損失の金額は雑所得の金額の計算上生じたものであるなどと認定、更正処分等をしてきたため、請求人側が原処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。
請求人側は、太陽光発電への取組みについては営利性、有償性及び反復継続性を有している上、危険負担を負いつつ太陽光発電設備等の規格・規模の検討と選定を行っているなどの諸般の要素に照らして判断すると、所得税法27条に規定される事業に該当する旨主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。
裁決は、大規模な太陽光発電設備を取得しておらず、請求人の自宅屋根に設置した太陽光設備から生じる売電収入は減価償却費に満たない小規模なものであるから、同設備に係る業務は営利性及び物的設備に乏しく、加えて人的設備も存在しないと指摘。そのため、請求人の太陽光発電への取組みは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務ということができないため、所得税法が定める事業には該当しないと判断して棄却した。
なお、更正処分により納付税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、いわゆる「正当な理由」があるとは認められないとした上で、いわゆる国外送金法による過少申告加算税の軽減措置及び加重措置は、いずれも財産又は債務に関して生ずる所得で政令で定めるものに対する所得税等に関して更正があり、過少申告加算税が課される場合などに適用されるものであるところ、更正があったといえるのは、請求人の不動産所得の金額の計算における青色申告特別控除額に係る更正がされた部分であり、それ以外の部分については所得税等に係る過少申告加算税の額の算定における軽減措置及び加重措置は適用されないと述べて、過少申告加算税の課決定処分は適法であるという判断を示した。
ただ、過少申告加算税の審判所認定額が原処分庁認定額に満たない部分があったため、結果的に一部取消しという裁決結果になった。
(22.12.14、国税不服審判所裁決)
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)