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独立企業間価格はライセンス取引全体で捉えるのが合理的

 国外関連者との間で行っためっき薬品の半製品等の販売及び製造の際に必要とされる無形資産(ノウハウ、特許権等)の使用許諾取引を巡って、独立企業間価格の算定の際に優先される基本三法を用いることの可否が争われた事件で東京地裁(鎌野真敬裁判長)は、ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引ごとに独立企業間価格を算定するのは合理的ではなく、ライセンス取引の全体を1つのものとして捉えるのが合理的であると判示して、法人側の主張を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、めっき薬品(めっき用化学品)の製造及び販売等を業とする内国法人がいわゆる国外関連者との間で行っためっき薬品の半製品等の販売に係る取引及びその半製品等を原料の一部とするめっき薬品を製造する際に必要とされる無形資産(ノウハウ、特許権等)の使用許諾取引に対して国外関連者から支払いを受けた対価の額が残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて算定した独立企業間価格 (措法66条の4①)に満たないと原処分庁が判断、独立企業間価格によって取引がされたものとみなして所得金額を計算し直し、法人税に係る更正処分及び賦課決定処分をしてきたのが発端。

 そこで法人側が、1)残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて各取引の独立企業間価格を算定するのは違法である、2)仮に残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて各取引の独立企業間価格を算定することができるとしても、その算定過程に誤りがあるため、原処分庁がした独立企業間価格の算定は違法であるなどと主張、各更正処分のうち申告額等を超える部分及び各賦課決定処分の全部の取消しを求めて提訴したという事案である。

 判決は、原処分庁側は基本三法又は基本三法と同等の方法を用いて国外関連取引の独立企業間価格を算定することができるか否かを検討する際には、ライセンス取引の全体又は棚卸資産販売取引の全体をそれぞれ1つの独立企業間価格を算定する単位として取り扱った上で、独立企業間価格をそれぞれ算定することができるかという観点から主張し、法人側は国外関連取引を構成する個別の取引ごとに独立企業間価格を算定すべきである旨を主張しているものであると指摘した。

 その上で、移転価格税制、独立企業間価格を定めた関係法令等を解釈。その結果、仮に、ライセンス取引を構成する個々の使用許諾取引のみに着目した場合の使用許諾取引の独立企業間価格の算定が可能であったとしても、その価格の総和がライセンス取引全体を1つの単位として算定した場合の独立企業間価格と等しくなるとはいえず、かつ独自の経済的な価値自体のみを抽出してその経済的な価値の金額を個別に算出したり、それを個別の使用許諾取引に個別に割り付けて具体的な金額を算出するのが可能であるとは認め難いとも指摘。

 結局、ライセンス取引の独立企業間価格を算定するに当たっては、少なくともライセンス取引全体を1つのものとして捉えるのが合理的であると判示して棄却した。

(2020.02.28東京地裁判決、平成27年(行ウ)第535号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)



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2023.05.08 15:37:07