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子に使用収益権が与えられ、駐車場収入は子に帰属すると判示

 親子間の土地使用貸借契約の有効性と駐車場収入の帰属先の判定つまり実質所得者課税の原則の適用の有無が争われた事件で大阪地裁(山地修裁判長)は、親と子らの間で使用貸借契約が締結されており、親から子らに各土地の使用収益権が与えられていることからも、駐車場収入は子らに帰属すると判示した上で、所得税等に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消しを求める部分と所得税等の更正処分のうち不動産所得の金額、納付すべき税額を超えない部分の取消しを求める部分については却下したものの、所得税等の更正処分のうち不動産所得の金額及び納付すべき税額を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分については取り消す旨の判決を言い渡した。

 この事件は、土地を多数所有する農業従事者が所得税及び復興特別所得税について収入の計上誤り等を理由とする更正の請求をしたのが発端。これに対して原処分庁が、更正すべき理由がない旨の通知処分をするとともに、農業従事者の子らの名義で賃貸された土地の賃料に係る収益は農業従事者に帰属すると認定、増額更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、農業従事者側が原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 つまり原処分庁側は、駐車場収入を使用貸借契約の締結によって放棄し、その経済的利益を子らに移転させたものであると認定、こうした租税負担軽減のスキームは通常の経済取引としてあり得ず、社会通念に照らしても不自然・不合理なものであると主張して、実質的な所得者に対して課税するため所得税法12条を発動したというわけだ。

 判決はまず、民法上認められる所得の帰属の有無を離れて、担税力を有するか否かによって所得の帰属が決まると解することはできないと述べるとともに、そのことは所得が不動産所得であるからといって異ならないというべきであると指摘。また、子らは賃貸人として各駐車場収入を収益として享受しているのであるから、単なる名義人であってその収益を享受していないということはできないとも指摘した。

 その結果、子らが親所有の各土地を第三者に賃貸し、親と子らの間に各使用貸借契約が締結されているこのような事例においては、各使用貸借契約によって親から子らに各土地の使用収益権が与えられていることになるから、賃貸に係る駐車場収入は子らに帰属すると判示して、原処分庁側の主張を斥ける判決を言い渡した。原処分庁側は判決内容を不服として控訴した。

(2021.04.22大阪地裁判決、平成31年(行ウ)第51号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 親子間の土地使用貸借契約の有効性と駐車場収入の帰属先の判定つまり実質所得者課税の原則の適用の有無が争われた事件で大阪地裁(山地修裁判長)は、親と子らの間で使用貸借契約が締結されており、親から子らに各土地の使用収益権が与えられていることからも、駐車場収入は子らに帰属すると判示した上で、所得税等に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消しを求める部分と所得税等の更正処分のうち不動産所得の金額、納付すべき税額を超えない部分の取消しを求める部分については却下したものの、所得税等の更正処分のうち不動産所得の金額及び納付すべき税額を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分については取り消す旨の判決を言い渡した。 この事件は、土地を多数所有する農業従事者が所得税及び復興特別所得税について収入の計上誤り等を理由とする更正の請求をしたのが発端。これに対して原処分庁が、更正すべき理由がない旨の通知処分をするとともに、農業従事者の子らの名義で賃貸された土地の賃料に係る収益は農業従事者に帰属すると認定、増額更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、農業従事者側が原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。 つまり原処分庁側は、駐車場収入を使用貸借契約の締結によって放棄し、その経済的利益を子らに移転させたものであると認定、こうした租税負担軽減のスキームは通常の経済取引としてあり得ず、社会通念に照らしても不自然・不合理なものであると主張して、実質的な所得者に対して課税するため所得税法12条を発動したというわけだ。 判決はまず、民法上認められる所得の帰属の有無を離れて、担税力を有するか否かによって所得の帰属が決まると解することはできないと述べるとともに、そのことは所得が不動産所得であるからといって異ならないというべきであると指摘。また、子らは賃貸人として各駐車場収入を収益として享受しているのであるから、単なる名義人であってその収益を享受していないということはできないとも指摘した。 その結果、子らが親所有の各土地を第三者に賃貸し、親と子らの間に各使用貸借契約が締結されているこのような事例においては、各使用貸借契約によって親から子らに各土地の使用収益権が与えられていることになるから、賃貸に係る駐車場収入は子らに帰属すると判示して、原処分庁側の主張を斥ける判決を言い渡した。原処分庁側は判決内容を不服として控訴した。(2021.04.22大阪地裁判決、平成31年(行ウ)第51号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2023.03.07 15:18:53