出資を超える部分はみなし配当として所得を構成すると判断
持分会社の社員の死亡退社に伴う持分払戻請求権の価額相当額のうち、出資した金額を超える部分がみなし配当に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、社員権が死亡と同時に持分払戻請求権に転換し、その転換時点において、持分払戻請求権の価額のうち元本(出資)を超える部分が剰余金の配当等(いわゆるみなし配当)として死亡社員の所得を構成すると判断、審査請求を棄却した。
この事件は、合資会社の無限責任社員だった被相続人の申告を巡って、原処分庁が合資会社の無限責任社員が死亡退社したことに伴い発生した持分払戻請求権の価額のうちの社員の出資額を超える金額は、その社員に対する配当とみなされると判断、所得税等の更正処分等を行ってきたのが発端。そこで、その社員の相続人である審査請求人らが、持分払戻請求権に係る金銭等の交付を受けていないのであるから、配当とみなされる金額はないなどと反論、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。
つまり、請求人らは、持分会社の社員(被相続人)の死亡退社に伴う持分払戻請求権について、その払戻額を零円とすることが持分会社の総社員による同意で決定されており、相続人である請求人らに対し金銭その他の資産の交付はされていないのであるから、所得税法25条(配当等とみなす金額)1項の規定によって配当等とみなされる金額はない旨主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。
これに対して裁決はまず、被相続人が務めていた持分会社(合資会社)の定款には会社法608条(相続及び合併の場合の特則)1項に規定された持分の承継に関する定めがないことからすれば、被相続人は死亡退社によって払戻請求権を取得したものと認められると指摘。その上で、被相続人が有していた社員権(出資)が払戻請求権に転換した時点、すなわち、相続開始日において払戻請求権の価額相当額の経済的価値が被相続人にもたらされたといえるという判断を示した。
その結果、その価額相当額のうち、出資に対応する部分の金額を超える金額は被相続人のみなし配当と認められることから、審査請求人の主張には理由がないとして審査請求を斥けた。なお、みなし配当所得を申告しなかったことについて、「正当な理由(通法65④一)」の有無も争われたが、正当な理由があるとは認められないと判断、請求人側の主張を同様に斥けている。
(2022.06.02 国税不服審判所裁決)
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