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防衛費 3つの増税で財源確保へ 建設国債も膨張か

 防衛費増額の財源確保の裏付けが焦点となった与党税制改正大綱が決定した。法人税、所得税、たばこ税の3税の増税で賄えるのはあくまでも一部で、政府・与党は歳出改革や税外収入の確保も徹底するというが、毎年度の安定財源としては心もとない。防衛費の増額を賄うため、建設国債1・6兆円の発行に踏み切る見通しだが、「規模ありき」で、財政的に強引な防衛力強化は将来に禍根を残す懸念が浮かんできた。
 防衛費の財源とする3税の増税時期は「2024年以降の適切な時期」とし、岸田文雄首相は増税時期を「来年決定する」と表明。与党内などから慎重論が噴出する中で判断を先送りした。
 増税の柱の法人税は税率を変えず、本来の税額に4~4.5%を上乗せする。所得2400万円程度以下の中小企業は増税の対象外で、実際に増税されるのは全法人の6%弱となる。所得税は税額に1%を上乗せして防衛費に充てる付加税を新設。東日本大震災の復興財源として所得税額に上乗せしている復興特別所得税の税率を2.1%から1%引き下げて当面の所得税負担は据え置くが、37年末までとしていた期限を「復興財源を確保するために必要な長さ」に延長。所得税全体では実質的な増税となる。たばこ税は1本換算で3円を段階的に引き上げていく。
 増税で防衛費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げる27年度までに1兆円強の財源確保を見通す。一方で、増税時期が不透明なため、公共事業などに限って発行を認めてきた「建設国債」の使い道を広げ、自衛隊の隊舎や倉庫といった施設の整備に充てる。
 危険なのは、防衛予算の膨張を防ぐ歯止めが一つ外れようとしていることだ。国債で集めた資金を防衛費に直接充てる道は、膨大な戦費を調達し、悲惨な戦禍を引き起こした第二次世界大戦時の財政運営とも共通する。世論の反発を招きやすい増税より政治的ハードルが低く、艦船や戦闘機など装備にまで使い道を広げる狙いがあるとみられる。ある経済官庁幹部は「建設国債は実体上は赤字国債と変わらない。歳出改革をどこまで徹底できるかは年明けからの議論次第になると思う」と指摘している。

提供元:エヌピー通信社



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 防衛費増額の財源確保の裏付けが焦点となった与党税制改正大綱が決定した。法人税、所得税、たばこ税の3税の増税で賄えるのはあくまでも一部で、政府・与党は歳出改革や税外収入の確保も徹底するというが、毎年度の安定財源としては心もとない。防衛費の増額を賄うため、建設国債1・6兆円の発行に踏み切る見通しだが、「規模ありき」で、財政的に強引な防衛力強化は将来に禍根を残す懸念が浮かんできた。 防衛費の財源とする3税の増税時期は「2024年以降の適切な時期」とし、岸田文雄首相は増税時期を「来年決定する」と表明。与党内などから慎重論が噴出する中で判断を先送りした。 増税の柱の法人税は税率を変えず、本来の税額に4~4.5%を上乗せする。所得2400万円程度以下の中小企業は増税の対象外で、実際に増税されるのは全法人の6%弱となる。所得税は税額に1%を上乗せして防衛費に充てる付加税を新設。東日本大震災の復興財源として所得税額に上乗せしている復興特別所得税の税率を2.1%から1%引き下げて当面の所得税負担は据え置くが、37年末までとしていた期限を「復興財源を確保するために必要な長さ」に延長。所得税全体では実質的な増税となる。たばこ税は1本換算で3円を段階的に引き上げていく。 増税で防衛費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げる27年度までに1兆円強の財源確保を見通す。一方で、増税時期が不透明なため、公共事業などに限って発行を認めてきた「建設国債」の使い道を広げ、自衛隊の隊舎や倉庫といった施設の整備に充てる。 危険なのは、防衛予算の膨張を防ぐ歯止めが一つ外れようとしていることだ。国債で集めた資金を防衛費に直接充てる道は、膨大な戦費を調達し、悲惨な戦禍を引き起こした第二次世界大戦時の財政運営とも共通する。世論の反発を招きやすい増税より政治的ハードルが低く、艦船や戦闘機など装備にまで使い道を広げる狙いがあるとみられる。ある経済官庁幹部は「建設国債は実体上は赤字国債と変わらない。歳出改革をどこまで徹底できるかは年明けからの議論次第になると思う」と指摘している。提供元:エヌピー通信社
2022.12.22 16:16:57