政府税調で再び議論 「1億円の壁」は崩せるか
所得が1億円を超えると税負担率が下がり、富裕層の優遇になっていると指摘されている「1億円の壁」問題が、年末の税制改正を前に注目を集めている。
政府の税制調査会で10月に議題に挙がり、委員の中からは是正を求める声が相次いだ。また、与党や政府内でも問題視する意見が出ており、SNSでは賛否が飛び交っている。
給与所得税の最高税率は55%だが、申告分離課税の株式や土地・建物の売却益の所得税は住民税と合わせると20%。富裕層は金融所得の割合が相対的に大きいため、年間所得1億円を境に税負担率が下がる状況が問題視されている。財務省が作成した資料によると、所得税と社会保険料の負担率は所得が5000万~1億円の間が28.7%で最も高く、1億円を超えると、低下傾向に一転する。
岸田文雄首相は2021年の総裁選で「分配」を掲げ、金融所得課税の強化を訴えて出馬したが、直後に株価が急落するなど市場の反発を受け、議論は先送りされていた。政権支持率も下がる中、看板としていた「分配」色がかすんできているとの批判を受けてきたが、年末に向けて議論が急転しそうだ。
11月10日にあった公明党税制調査会の勉強会でも1億円の壁問題がテーマに挙がり、政府税調での議論が紹介された。会合後に記者団の取材に応じた西田実仁会長は、反対も賛成も意見は出なかったと説明した。一方、自民党税調の宮沢洋一会長は10月、報道各社のインタビューに対し、「格差が広がる動きが間違いなくあると個人的に思っている。今年はしっかり議論をしなければならない」と述べている。与党税調は11月後半にも、年末の税制改正大綱の取りまとめに向けて議論を本格化させる。
提供元:エヌピー通信社