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類似同業者の所得率はマイナス値で計算すべきと裁決

 林業を営む者に対して推計の方法によって算定された所得税等の更正処分等を巡って推計の合理性の有無が争われた事件で国税不服審判所は、原処分庁による類似同業者の抽出基準及び抽出方法は合理性を有すると認定したものの、平均所得率の計算過程において、損失の金額が生じていた類似同業者の所得率はマイナス値で計算すべきであると指摘、結果的に原処分の一部を取り消した。

 この事件は、林業を営む審査請求人から帳簿書類等の提示がなかったことを理由に、原処分庁が1)事業所得の金額を推計の方法によって算定して所得税等の更正処分等を行うとともに、2)課税仕入れに係る消費税額の控除を適用することなく消費税等の更正処分等をしてきたことから、請求人が1)調査手続に違法又は不当がある、2)事業所得の金額を推計する必要性及び合理性がない、3)原処分庁が税務職員の守秘義務が担保されないとして帳簿等の検査を拒否したのであるから課税仕入れに係る消費税額の控除の適用がされるべきであるなどと主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 つまり請求人側は、原処分庁の所得金額の推計の算出について、1)算出基準において青色申告の承認を受けた者の確定申告が適切になされたものであり、かつ、請求人の確定申告と比較しうる理由の根拠が示されていない、2)請求人の所得金額の推計に用いた請求人と業種・業態が類似し事業規模が同程度であると判断した類似同業者の業態が全く不明であり、所得率の高い同業者だけを選んで推計の基礎に用いた可能性も否定できない、さらに3)類似同業者の各年分の平均所得率は年分によってかなりの開差があることから、推計の合理性があるとはいえないなどと主張して、原処分の全部取消しを求めたわけだ。

 裁決は、原処分庁が類似同業者を抽出するにあたり、業種・業態の類似性、個人又は法人の別、事業所の所在地の接近性、資料の正確性並びに事業規模の類似性等に係る基準を設けてこれらの条件に全て該当する者を抽出したのであるから、抽出基準は合理性を有している。また、同業者の抽出過程に原処分庁の恣意が介在したとの事実は認められない。そして、平均所得率の算出に使用した資料は、いずれも帳簿書類等が整っている青色申告者の決算書であり、その信頼性ないし正確性は高く、類似同業者の件数も類似同業者の個別性を平均化するに足るということができると指摘。

 したがって、類似同業者と請求人の間には類似性があり、原処分庁の類似同業者の抽出基準及び抽出方法は合理性を有するものであると認定した。その一方で、原処分庁の平均所得率の計算過程において、類似同業者のうち1名に損失の金額が生じていたにもかかわらず、その者の所得率を0.00%で計算していることに触れ、その者の所得率を0.00%とすべき特殊な事情は認められないとも指摘。その結果、所得率は損失の金額で算出したマイナス値で計算すべきであるとして、原処分の一部を取り消した。

(2021.06.23 国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 林業を営む者に対して推計の方法によって算定された所得税等の更正処分等を巡って推計の合理性の有無が争われた事件で国税不服審判所は、原処分庁による類似同業者の抽出基準及び抽出方法は合理性を有すると認定したものの、平均所得率の計算過程において、損失の金額が生じていた類似同業者の所得率はマイナス値で計算すべきであると指摘、結果的に原処分の一部を取り消した。 この事件は、林業を営む審査請求人から帳簿書類等の提示がなかったことを理由に、原処分庁が1)事業所得の金額を推計の方法によって算定して所得税等の更正処分等を行うとともに、2)課税仕入れに係る消費税額の控除を適用することなく消費税等の更正処分等をしてきたことから、請求人が1)調査手続に違法又は不当がある、2)事業所得の金額を推計する必要性及び合理性がない、3)原処分庁が税務職員の守秘義務が担保されないとして帳簿等の検査を拒否したのであるから課税仕入れに係る消費税額の控除の適用がされるべきであるなどと主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。 つまり請求人側は、原処分庁の所得金額の推計の算出について、1)算出基準において青色申告の承認を受けた者の確定申告が適切になされたものであり、かつ、請求人の確定申告と比較しうる理由の根拠が示されていない、2)請求人の所得金額の推計に用いた請求人と業種・業態が類似し事業規模が同程度であると判断した類似同業者の業態が全く不明であり、所得率の高い同業者だけを選んで推計の基礎に用いた可能性も否定できない、さらに3)類似同業者の各年分の平均所得率は年分によってかなりの開差があることから、推計の合理性があるとはいえないなどと主張して、原処分の全部取消しを求めたわけだ。 裁決は、原処分庁が類似同業者を抽出するにあたり、業種・業態の類似性、個人又は法人の別、事業所の所在地の接近性、資料の正確性並びに事業規模の類似性等に係る基準を設けてこれらの条件に全て該当する者を抽出したのであるから、抽出基準は合理性を有している。また、同業者の抽出過程に原処分庁の恣意が介在したとの事実は認められない。そして、平均所得率の算出に使用した資料は、いずれも帳簿書類等が整っている青色申告者の決算書であり、その信頼性ないし正確性は高く、類似同業者の件数も類似同業者の個別性を平均化するに足るということができると指摘。 したがって、類似同業者と請求人の間には類似性があり、原処分庁の類似同業者の抽出基準及び抽出方法は合理性を有するものであると認定した。その一方で、原処分庁の平均所得率の計算過程において、類似同業者のうち1名に損失の金額が生じていたにもかかわらず、その者の所得率を0.00%で計算していることに触れ、その者の所得率を0.00%とすべき特殊な事情は認められないとも指摘。その結果、所得率は損失の金額で算出したマイナス値で計算すべきであるとして、原処分の一部を取り消した。(2021.06.23 国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
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