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取得費加算額は貸家建付地の評価額の100分の90が適法と判示

 相続した土地の譲渡所得に係る取得費加算額を計算する際に、「譲渡資産の課税価格の計算の基礎に算入される価額(措令25の15①二)」を各土地の相続税評価額に100分の90を乗じた金額とすることの適否が争われた事件で東京地裁(鎌野真敬裁判長)は、土地の貸家建付地としての相続税評価額に100分の90を乗じた金額とした更正処分を適法であると判示、納税者側の請求を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、相続人である原告らが被相続人の養母から相続して取得した土地に借地権を設定した対価として受領した権利金に係る所得を分離課税の長期譲渡所得の金額に計上して所得税及び復興特別所得税の確定申告をしたのが発端。これに対して原処分庁が、租税特別措置39条1項の適用により取得費の額に加算される相続税額(取得費加算額)の計算に誤りがあると認定、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、原告らが各更正処分の一部及び各賦課決定処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 原告らは、各借地権設定契約に係る各権利金が各土地の価額の10分の5に相当する金額を超えるものであることから、各権利金に係る所得は譲渡所得に該当するものと判断して申告した上で、各権利金に係る分離課税の長期譲渡所得の金額の計算に当たっては、各土地の相続税評価額に100分の90を乗じた相続税の取得費加算額を計算して申告した。

 しかし、原処分庁側は、相続の開始の時には各土地に各借地権は設定されておらず、その後の各借地権設定契約により各土地が各借地権と各底地部分に分離され、各底地部分の権利が原告らに残ることとなったのであるから、各底地部分に対応する相続税額を取得費加算額に含めることができないことは明らかである旨主張して請求の棄却を求めた。

 判決はまず、借地権等の設定に係る所得を譲渡所得として課税する趣旨並びに相続税の取得費加算特例の趣旨及び改正経緯等に触れた上で、譲渡所得に係る「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は貸家建付地としての各土地の評価額に借地権割合である90%を乗じた価額とするのが相当であると指摘。

 また、譲渡所得に係る「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を貸家建付地としての各土地の評価額とすることを認めれば、各借地権設定契約の締結後も各底地部分の権利は譲渡人である原告らに帰属したままであるにもかかわらず、各底地部分も含めた各土地の権利全部に対応した相続税額を取得費に加算することを認めることになり、結果的に、譲渡所得が課税されていない底地部分も取得費加算の対象に含めることを認めることになるとも指摘した。

 結局、譲渡所得に係る「譲渡をした資産の課税価格の計算の基礎に算入される価額」は、各土地の貸家建付地としての相続税評価額に100分の90を乗じた金額とした各更正処分は適法であると判示、納税者側の請求を棄却した。

(202110.12東京地裁判決、令和元年(行ウ)第648号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 相続した土地の譲渡所得に係る取得費加算額を計算する際に、「譲渡資産の課税価格の計算の基礎に算入される価額(措令25の15①二)」を各土地の相続税評価額に100分の90を乗じた金額とすることの適否が争われた事件で東京地裁(鎌野真敬裁判長)は、土地の貸家建付地としての相続税評価額に100分の90を乗じた金額とした更正処分を適法であると判示、納税者側の請求を棄却する判決を言い渡した。 この事件は、相続人である原告らが被相続人の養母から相続して取得した土地に借地権を設定した対価として受領した権利金に係る所得を分離課税の長期譲渡所得の金額に計上して所得税及び復興特別所得税の確定申告をしたのが発端。これに対して原処分庁が、租税特別措置39条1項の適用により取得費の額に加算される相続税額(取得費加算額)の計算に誤りがあると認定、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、原告らが各更正処分の一部及び各賦課決定処分の取消しを求めて提訴したという事案である。 原告らは、各借地権設定契約に係る各権利金が各土地の価額の10分の5に相当する金額を超えるものであることから、各権利金に係る所得は譲渡所得に該当するものと判断して申告した上で、各権利金に係る分離課税の長期譲渡所得の金額の計算に当たっては、各土地の相続税評価額に100分の90を乗じた相続税の取得費加算額を計算して申告した。 しかし、原処分庁側は、相続の開始の時には各土地に各借地権は設定されておらず、その後の各借地権設定契約により各土地が各借地権と各底地部分に分離され、各底地部分の権利が原告らに残ることとなったのであるから、各底地部分に対応する相続税額を取得費加算額に含めることができないことは明らかである旨主張して請求の棄却を求めた。 判決はまず、借地権等の設定に係る所得を譲渡所得として課税する趣旨並びに相続税の取得費加算特例の趣旨及び改正経緯等に触れた上で、譲渡所得に係る「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は貸家建付地としての各土地の評価額に借地権割合である90%を乗じた価額とするのが相当であると指摘。 また、譲渡所得に係る「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を貸家建付地としての各土地の評価額とすることを認めれば、各借地権設定契約の締結後も各底地部分の権利は譲渡人である原告らに帰属したままであるにもかかわらず、各底地部分も含めた各土地の権利全部に対応した相続税額を取得費に加算することを認めることになり、結果的に、譲渡所得が課税されていない底地部分も取得費加算の対象に含めることを認めることになるとも指摘した。 結局、譲渡所得に係る「譲渡をした資産の課税価格の計算の基礎に算入される価額」は、各土地の貸家建付地としての相続税評価額に100分の90を乗じた金額とした各更正処分は適法であると判示、納税者側の請求を棄却した。(202110.12東京地裁判決、令和元年(行ウ)第648号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2022.08.08 15:41:07