HOME ニュース一覧 全自動乾海苔製造装置等を水産養殖業用設備と判断、取消し

税ニュース

全自動乾海苔製造装置等を水産養殖業用設備と判断、取消し

 海苔養殖業を営む者が事業の用に供する全自動乾海苔製造装置等は、耐用年数省令別表第二の耐用年数10年の食料品製造業用設備又は耐用年数5年の水産養殖業用設備のいずれに該当するのかその判断が争われた事件で国税不服審判所は、水産養殖業用設備(耐用年数5年)に該当すると判断、原処分の全部及び一部を取り消した。

 この事件は、海苔養殖区域において海苔養殖業を営む個人事業者(審査請求人)が、事業所得の計算上、必要経費に算入した全自動乾海苔製造装置等の設備に係る減価償却費を水産養殖業用設備(耐用年数5年)等として計算をして申告したのが発端となった。

 この申告に対して原処分庁が、全自動乾海苔製造装置等の設備は食料品製造業用設備(耐用年数10年)に該当すると判断、所得税等の更正処分を行うとともに、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、請求人が原処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、請求人が使用する全自動乾海苔製造装置等の設備(償却資産)は、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-4-2《いずれの「設備の種類」に該当するかの判定》及び同1-4-3《最終製品に基づく判定》の定めに従えば、その償却資産が製造する最終製品は乾海苔であり、乾海苔は水産食料品に該当することが明らかであり、日本標準産業分類の中分類「09-食料品製造業」の業種用に通常使用されていると認められることから、減価償却資産の耐用年数に関する省令の別表第二《機械及び装置の耐用年数表》の番号1「食料品製造業用設備」に該当する旨主張して、審査請求の棄却を求めた。

 しかし裁決は、償却資産は請求人が自家取得した原藻を自宅敷地内作業場において乾燥させて漁業協同組合へ出荷できる乾海苔にするために、海苔養殖業従事者のみに通常使用されていると認めるのが相当であると指摘。そして、海苔養殖業者が漁業協同組合へ出荷する乾海苔は直ちに食用に供されるものではなく、食用に加工し流通させるのは漁業協同組合から乾海苔を購入した流通業者であることからすれば、乾海苔が水産食料品であることが明らかであるから、償却資産が食料品製造業用として通常使用されていると認めることは困難であるとも指摘。

 その結果、日本標準産業分類の大分類「B-漁業」の中分類「04-水産養殖業」の業種用として通常使用されていると認められるから、別表第二の番号28「水産養殖業用設備」に該当すると判断、一事業年度分の更正処分については全部取消し、二事業年度分の更正処分については一部取消し、さらに三事業年度分の過少申告加算税についてはその全部を取り消した。

(21.12.17 国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

この記事のカテゴリ

関連リンク

証拠書類のない簿外経費への対応は来年1月から適用

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


税ニュース
/news/tax/2022/img/img_shotoku_01_s.jpg
 海苔養殖業を営む者が事業の用に供する全自動乾海苔製造装置等は、耐用年数省令別表第二の耐用年数10年の食料品製造業用設備又は耐用年数5年の水産養殖業用設備のいずれに該当するのかその判断が争われた事件で国税不服審判所は、水産養殖業用設備(耐用年数5年)に該当すると判断、原処分の全部及び一部を取り消した。 この事件は、海苔養殖区域において海苔養殖業を営む個人事業者(審査請求人)が、事業所得の計算上、必要経費に算入した全自動乾海苔製造装置等の設備に係る減価償却費を水産養殖業用設備(耐用年数5年)等として計算をして申告したのが発端となった。 この申告に対して原処分庁が、全自動乾海苔製造装置等の設備は食料品製造業用設備(耐用年数10年)に該当すると判断、所得税等の更正処分を行うとともに、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、請求人が原処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。 原処分庁側は、請求人が使用する全自動乾海苔製造装置等の設備(償却資産)は、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-4-2《いずれの「設備の種類」に該当するかの判定》及び同1-4-3《最終製品に基づく判定》の定めに従えば、その償却資産が製造する最終製品は乾海苔であり、乾海苔は水産食料品に該当することが明らかであり、日本標準産業分類の中分類「09-食料品製造業」の業種用に通常使用されていると認められることから、減価償却資産の耐用年数に関する省令の別表第二《機械及び装置の耐用年数表》の番号1「食料品製造業用設備」に該当する旨主張して、審査請求の棄却を求めた。 しかし裁決は、償却資産は請求人が自家取得した原藻を自宅敷地内作業場において乾燥させて漁業協同組合へ出荷できる乾海苔にするために、海苔養殖業従事者のみに通常使用されていると認めるのが相当であると指摘。そして、海苔養殖業者が漁業協同組合へ出荷する乾海苔は直ちに食用に供されるものではなく、食用に加工し流通させるのは漁業協同組合から乾海苔を購入した流通業者であることからすれば、乾海苔が水産食料品であることが明らかであるから、償却資産が食料品製造業用として通常使用されていると認めることは困難であるとも指摘。 その結果、日本標準産業分類の大分類「B-漁業」の中分類「04-水産養殖業」の業種用として通常使用されていると認められるから、別表第二の番号28「水産養殖業用設備」に該当すると判断、一事業年度分の更正処分については全部取消し、二事業年度分の更正処分については一部取消し、さらに三事業年度分の過少申告加算税についてはその全部を取り消した。(21.12.17 国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2022.07.25 16:03:49