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全て共通対応課税仕入れに区分されると判示、逆転判決

 不動産の売買を目的とした法人による将来の転売を目的としたマンションの購入に係る各課税仕入れは課税対応課税仕入れと共通対応課税仕入れのいずれに区分されるべきなのかその用途区分の判定が争われた事件で東京高裁(岩井伸晃裁判長)は、法人側の請求を認容した一審判決(2020.09.03判決)の内容を斥け、課税仕入れにつき将来課税売上げを生ずる取引と非課税売上げを生ずる取引の双方が客観的に見込まれる課税仕入れについては、 全て課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分されると判示して、国側勝訴の逆転判決を言い渡した。

 この事件は、不動産の売買等を目的とする法人が将来の転売を目的にしたマンション84棟の購入について課税対応課税仕入れに区分されると判断、各課税仕入れに係る消費税額の全額を課税標準額に対する消費税額から控除して消費税等の申告を行ったのが発端となった。

 これに対して原処分庁は、建物の販売(課税資産の譲渡等)のみならず住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)も目的としたものであるから各課税仕入れは課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(つまり共通対応課税仕入れ)に区分すべきであり、各課税仕入れに係る消費税額の一部しか控除することができないと判断、消費税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきた。

 そこで法人側が、原処分の取消しを求めて提訴したところ、一審の東京地裁は、賃料収入が見込まれることをもって、各課税仕入れにつき「その他の資産の譲渡等」にも要するものとして共通対応課税仕入れに区分することは、事業に係る経済実態から著しくかい離するばかりでなく、 課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものに適正に配分するという観点に照らしても相当性を欠くから、各課税仕入れは課税対応課税仕入れに区分すべきと判示して、法人側の請求を認容したわけだ。その結果、この判決内容を不服とした原処分庁側が一審判決の取消しを求めて控訴していたという事案である。

 控訴審はまず、消費税法30条2項1号の文言及び趣旨等に即して考えると、課税対応課税仕入れとは課税仕入れにつき将来課税売上げを生ずる取引のみが客観的に見込まれている課税仕入れのみをいい、非課税対応課税仕入れとは課税仕入れにつき将来非課税売上げを生ずる取引のみが客観的に見込まれている課税仕入れのみをいい、課税仕入れにつき将来課税売上を生ずる取引と非課税売上げを生ずる取引の双方が客観的に見込まれる課税仕入れについては、全て共通対応課税仕入れに区分されると解するのが相当と解釈。

 その上で、各仕入日において、将来、住宅の貸付けによる賃料収入という非課税売上げが見込まれるとともに、各マンションの売却による課税売上げも見込まれるから、各課税仕入れは、課税対応課税仕入れ及び非課税対応課税仕入れのいずれにも該当せず、共通対応課税仕入れに該当するものと解するのが相当であると判示して、法人側の請求を棄却する判決を言い渡した。この控訴審の判決内容を不服とした法人側は、更にその取消しを求めて上告受理申立中である。

(2021.07.29東京高裁判決、令和2年(行コ)第190号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 不動産の売買を目的とした法人による将来の転売を目的としたマンションの購入に係る各課税仕入れは課税対応課税仕入れと共通対応課税仕入れのいずれに区分されるべきなのかその用途区分の判定が争われた事件で東京高裁(岩井伸晃裁判長)は、法人側の請求を認容した一審判決(2020.09.03判決)の内容を斥け、課税仕入れにつき将来課税売上げを生ずる取引と非課税売上げを生ずる取引の双方が客観的に見込まれる課税仕入れについては、 全て課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分されると判示して、国側勝訴の逆転判決を言い渡した。 この事件は、不動産の売買等を目的とする法人が将来の転売を目的にしたマンション84棟の購入について課税対応課税仕入れに区分されると判断、各課税仕入れに係る消費税額の全額を課税標準額に対する消費税額から控除して消費税等の申告を行ったのが発端となった。 これに対して原処分庁は、建物の販売(課税資産の譲渡等)のみならず住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)も目的としたものであるから各課税仕入れは課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(つまり共通対応課税仕入れ)に区分すべきであり、各課税仕入れに係る消費税額の一部しか控除することができないと判断、消費税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきた。 そこで法人側が、原処分の取消しを求めて提訴したところ、一審の東京地裁は、賃料収入が見込まれることをもって、各課税仕入れにつき「その他の資産の譲渡等」にも要するものとして共通対応課税仕入れに区分することは、事業に係る経済実態から著しくかい離するばかりでなく、 課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものに適正に配分するという観点に照らしても相当性を欠くから、各課税仕入れは課税対応課税仕入れに区分すべきと判示して、法人側の請求を認容したわけだ。その結果、この判決内容を不服とした原処分庁側が一審判決の取消しを求めて控訴していたという事案である。 控訴審はまず、消費税法30条2項1号の文言及び趣旨等に即して考えると、課税対応課税仕入れとは課税仕入れにつき将来課税売上げを生ずる取引のみが客観的に見込まれている課税仕入れのみをいい、非課税対応課税仕入れとは課税仕入れにつき将来非課税売上げを生ずる取引のみが客観的に見込まれている課税仕入れのみをいい、課税仕入れにつき将来課税売上を生ずる取引と非課税売上げを生ずる取引の双方が客観的に見込まれる課税仕入れについては、全て共通対応課税仕入れに区分されると解するのが相当と解釈。 その上で、各仕入日において、将来、住宅の貸付けによる賃料収入という非課税売上げが見込まれるとともに、各マンションの売却による課税売上げも見込まれるから、各課税仕入れは、課税対応課税仕入れ及び非課税対応課税仕入れのいずれにも該当せず、共通対応課税仕入れに該当するものと解するのが相当であると判示して、法人側の請求を棄却する判決を言い渡した。この控訴審の判決内容を不服とした法人側は、更にその取消しを求めて上告受理申立中である。(2021.07.29東京高裁判決、令和2年(行コ)第190号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
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