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個人事業税の賦課決定処分に国賠法上の違法性はないと判示

 府税事務所長が個人事業者に行った個人事業税の賦課決定処分が違法なものとして国家賠償請求、不当利得返還請求の対象になるか否かの判断が争われた事件で大阪地裁(山地修裁判長)は、府税事務所長等が賦課決定処分の当時、収入要件を解釈適用する際に、消費税等相当額を除いた賃貸料収入額を基準にしなければならないという職務上通常尽くすべき注意義務を負っていたということはできないから国家賠償法上の違法性及び過失は認められず、また民法上の不当利得として構成された不当利得返還請求は主張自体失当と言わざるを得ないと判示して、個人事業者側の請求を悉く斥けた。

 この事件は不動産の貸付けを行う個人事業者が、府税事務所長等が個人事業税の賦課決定処分をした際に、不動産貸付けが個人事業税の課税客体を規定する地方税法72条の2第8項4号が定める不動産貸付業に該当しないにもかかわらず、これに該当するという誤った判断をして、違法に賦課決定処分をしたなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権又は賦課決定処分の無効を理由とする不当利得返還請求権に基づき、納付した個人事業税相当額及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払いを求めて提訴したという事案である。

 個人事業者側は、府税事務所長等が賦課決定処分をするに当たって、「個人事業税に係る不動産貸付業及び駐車場業の課税の取扱通達」が定める収入要件に該当するか否かを判断する際には、消費税等相当額を含めない賃貸料収入額を基準にしなければならず、それを前提に確定申告書の記載だけでは収入要件に該当するか否かが判然としない場合には同通達が定める追加調査をしなければならなかったにもかかわらず、そのような追加調査を全く行わず、漫然と確定申告書の記載が消費税等相当額を含むか否かを確認することもなく、消費税等相当額を含めた賃貸料収入額を基準に不動産貸付けが不動産貸付業に該当すると判断して賦課決定処分をしたものであるから、国家賠償法上の違法性及び過失が認められるという主張を展開した。

 判決はまず、同通達が定める収入要件を解釈適用するに当たって基準とする不動産賃貸収入額に消費税等相当額を含めないとすることが地方税法や同通達に照らして当然の解釈であるとして取り扱わなければならなかったということはできないと指摘。

 その上で、府税事務所長等が賦課決定処分当時、同通達が定める収入要件を解釈適用するに当たり、消費税等相当額を除いた賃貸料収入額を基準にしなければならないという職務上通常尽くすべき注意義務を負っていたということはできないから、賦課決定処分をしたことについて国家賠償法上の違法性及び過失は認められないとして、損害の発生及びその数額について判断するまでもなく、損害賠償請求には理由がないと判示した。

 また、過誤納金の還付が公法上の不当利得返還の性質を有するものであることからすれば、納付された地方税に関して民法上の不当利得の特則を定め、過誤納金について民法上の不当利得の規定の適用を排除する趣旨であると解するのが相当であることから、民法上の不当利得として構成された不当利得返還請求は主張自体失当と言わざるを得ないとも判示して、請求を棄却した。

 (2021.01.28大阪地裁判決、令和元年(ワ)第4467号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)



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