最高裁も法人税を不当に減少させるものではないと判示、棄却
組織再編の際に一連の取引の一貫として行われた外国法人(同族法人)からの借入金利息の損金処理が「法人税の負担を不当に減少させる結果となるもの」に該当するか否かの判断が争われた事件で最高裁(岡正晶裁判長)は、法人側の主張を認容した1審、2審の判決内容を支持、その意義を明らかにするとともに、これを容認したとしても法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものには該当しないと判示して国側の上告を棄却、事件は確定した。
この事件は、音楽事業を目的とする内国法人が外国のグループ法人からの借入金の支払利息を損金に算入して処理したのが発端。これに対して原処分庁が、その損金処理を法人税の負担を不当に減少させるものであると認定、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきた。
そこで内国法人側が、借入れは組織再編成の一環として行われた正当な事業目的を有する経済的合理性のある取引であるから、更正処分等は法人税法132条1項の要件を欠く違法な処分であると主張、更正処分等の取消しを求めて提訴したという事案である。
その結果、一審(東京地裁)、二審(東京高裁)とも、経済的、実質的見地からも純粋経済人として不自然、不合理なものではないと判示して、法人側の請求を認容する判決を下したため、その判決内容を不服とした国側が上告、原審判決の取消しを求めていたというわけだ。
上告審はまず、法人税法132条1項の趣旨に触れ、同族会社等の場合、意思決定が少数の株主等の意図により左右され、法人税の負担を不当に減少させる結果となる行為又は計算が行われやすいことから、税負担の公平を維持するため、そのような行為又は計算が行われた場合に、これを正常な行為又は計算に引き直して法人税の更正又は決定をする権限を税務署長に認めたものであると指摘。
その上で、このような趣旨及び内容に鑑みれば、「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、 同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なものすなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいうと解するのが相当であるという考えを示した。
その結果、組織再編取引等に係る諸事情を総合的に考慮すれば、借入れは経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものとは言えず、これを容認した場合に法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものには当たらないと判示して、国側の上告を棄却、事件は確定した。
(2022.04.21最高裁第一小法廷判決、令和2年(行ヒ)第303号)
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