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分割による取得の全部が持分超過部分と判断、上告を棄却

 不動産取得税の賦課決定処分の可否判断を巡り、「分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分(持分超過部分)」の有無等が争われた事件で最高裁(戸倉三郎裁判長)は、共有物の分割によって不動産を取得した場合の持分超過部分の有無は、分割の対象とされた個々の不動産ごとに分割前の持分の割合に相当する価格と分割後に所有することになった不動産の価格とを比較して判断すべきものと解するのが相当と判示、上告を棄却した。

 この事件は、1人が10分の6、上告人他3名が10分の1の割合で共有していた不動産に係る共有物分割の訴えを巡って、東京地裁が平成27年8月、これらを一括して分割対象と認定した上で、各土地ほか1筆の土地を上告人の単独所有とし、その余を他の共有者らの単独所有とする内容の判決を言い渡し、その判決が確定したことを踏まえて都税事務所が、上告人が土地の持分10分の9を取得したものとして不動産取得税の賦課決定処分をしてきたのが発端となった。

 そこで上告人側が、賦課決定処分の取消しを求めて提訴したという事案であるが、各取得に対して不動産取得税を課すことができないにもかかわらず、賦課決定処分を適法とした控訴審の判断には、地方税法73条の7第32号の3の解釈の誤りがあるという主張から上告し、更にその取消しを求めてきたわけだ。

 最高裁はまず、上告人が複数の不動産を一括して分割の対象とする共有物の分割によって、各土地の各持分10分の9を取得したものであることから、このような場合における持分超過部分の有無及び額の判断の方法が問題となると指摘。その上で、不動産取得税に関する地方税法(地法73の15の2①)の内容等に触れ、不動産取得税は個々の不動産の取得ごとに課されるものであるという判断を示した。

 その結果、共有物の分割による不動産取得に係る持分超過部分の有無及び額は、複数の不動産を一括して分割の対象とする場合でも、対象とされた個々の不動産ごとに判断すべきと解するのが不動産取得税の課税の仕組みと整合的であり、また地方税法73条の7第2号の3括弧書きの「分割前の当該共有物に係る持分の割合」という文言にも沿う解釈ということができると指摘。

 結局、複数の不動産を一括して分割対象とする共有物の分割により不動産を取得した場合の持分超過部分の有無及び額は、分割対象とされた個々の不動産ごとに、分割前の持分の割合に相当する価格と分割後に所有することになった不動産の価格とを比較して判断すべきものと解するのが相当であると判示して、上告を棄却した。

(2022.03.22最高裁第三小法廷判決、令和3年(行ヒ)第62号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 不動産取得税の賦課決定処分の可否判断を巡り、「分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分(持分超過部分)」の有無等が争われた事件で最高裁(戸倉三郎裁判長)は、共有物の分割によって不動産を取得した場合の持分超過部分の有無は、分割の対象とされた個々の不動産ごとに分割前の持分の割合に相当する価格と分割後に所有することになった不動産の価格とを比較して判断すべきものと解するのが相当と判示、上告を棄却した。 この事件は、1人が10分の6、上告人他3名が10分の1の割合で共有していた不動産に係る共有物分割の訴えを巡って、東京地裁が平成27年8月、これらを一括して分割対象と認定した上で、各土地ほか1筆の土地を上告人の単独所有とし、その余を他の共有者らの単独所有とする内容の判決を言い渡し、その判決が確定したことを踏まえて都税事務所が、上告人が土地の持分10分の9を取得したものとして不動産取得税の賦課決定処分をしてきたのが発端となった。 そこで上告人側が、賦課決定処分の取消しを求めて提訴したという事案であるが、各取得に対して不動産取得税を課すことができないにもかかわらず、賦課決定処分を適法とした控訴審の判断には、地方税法73条の7第32号の3の解釈の誤りがあるという主張から上告し、更にその取消しを求めてきたわけだ。 最高裁はまず、上告人が複数の不動産を一括して分割の対象とする共有物の分割によって、各土地の各持分10分の9を取得したものであることから、このような場合における持分超過部分の有無及び額の判断の方法が問題となると指摘。その上で、不動産取得税に関する地方税法(地法73の15の2①)の内容等に触れ、不動産取得税は個々の不動産の取得ごとに課されるものであるという判断を示した。 その結果、共有物の分割による不動産取得に係る持分超過部分の有無及び額は、複数の不動産を一括して分割の対象とする場合でも、対象とされた個々の不動産ごとに判断すべきと解するのが不動産取得税の課税の仕組みと整合的であり、また地方税法73条の7第2号の3括弧書きの「分割前の当該共有物に係る持分の割合」という文言にも沿う解釈ということができると指摘。 結局、複数の不動産を一括して分割対象とする共有物の分割により不動産を取得した場合の持分超過部分の有無及び額は、分割対象とされた個々の不動産ごとに、分割前の持分の割合に相当する価格と分割後に所有することになった不動産の価格とを比較して判断すべきものと解するのが相当であると判示して、上告を棄却した。(2022.03.22最高裁第三小法廷判決、令和3年(行ヒ)第62号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2022.04.18 15:44:04