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相続財産である家屋の申告漏れには正当な理由があったと認定

 相続財産と認められる家屋を相続税の申告の際に申告をしなかったことについて、国税通則法65条4項が定める「正当な理由」があるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、所有者を被相続人の孫とする登記がなされているなど家屋に係る相続税の申告以前の状況からすると、家屋を申告しなかったことについて正当な理由が認められると判断、原処分を一部取り消した。

 この事件は、相続人である審査請求人が、亡母の相続に係る相続税の申告を行ったところ、原処分庁が亡母名義の預貯金口座から出金された現金の一部が請求人以外の共同相続人に預けられていたことなどを理由に、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ってきたのが発端となった。

 そこで請求人が、共同相続人に預けられていたとされた現金は相続税法9条によって共同相続人が贈与により取得したとみなすべきであり、また請求人は申告漏れとなった財産の存在を知り得る状況にはなかったのであるから、国税通則法65条4項が定める「正当な理由があると認められるものがある場合」に該当するなどと主張して更正処分の一部取消し及び賦課決定処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、相続開始時点において被相続人の孫名義となっていた家屋について、被相続人や共同相続人らの預金口座等を調査すれば、家屋の売買代金が実質的に支払われてはおらず、被相続人と孫との間の家屋に係る売買契約が成立していないことを確認できたのであるから、家屋が被相続人に帰属する財産であることを把握することは可能であったにもかかわらず、その確認を怠った請求人には「正当な理由」は認められない旨主張して審査請求の棄却を求めた。

 裁決は、相続開始時点において家屋の登記上の名義は孫名義であり、請求人自身が関与税理士として家屋の売買に係る譲渡所得の申告を行っていたことに加え、売買以前から家屋には被相続人ではなく譲受人である孫が居住していたことからすると、請求人はその家屋に係る被相続人と孫との間の売買契約が有効に成立し、家屋の所有権が孫に移転したと誤信せざるを得ない事情があったと言わざるを得ないと指摘。

 加えて、家屋の売買代金が実質的に支払われていないことを把握し得た時点が、相続税の申告期限後であったことを併せて考えれば、請求人が家屋を申告しなかったことによって相続税の申告が過少申告となったことについては、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお請求人に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷であって、請求人には「正当な理由」があったと認められると判断、原処分の一部を取り消した。

(2021.06.24国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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2021.12.20 16:21:20