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預金債権は滞納会社に帰属すると認定、控訴審も棄却

 租税債権の徴収を巡って、滞納会社と読み方が同じである関連会社名義の預金債権が滞納会社側に帰属するのか、関連会社側に帰属するのかその判断が争われた事件で東京高裁(村上正敏裁判長)は、滞納会社において管理され、主として滞納会社と取引先との間で行われていた取引に基づく金銭の入出金のために用いられていたことが認められるなどの事情の下では滞納会社に帰属すると判断して一審の判断を支持、控訴を棄却した。

 この事件は、LED照明等の設計開発・製造・販売等を目的とする株式会社(滞納会社)の主宰者が、妻を代表取締役とする株式会社(表記は異なるが滞納会社の商号の読み方と同一の法人)名義の普通預金口座を、 東京国税局長が滞納会社に対する租税債権の徴収のために、その預金口座に係る預金払戻請求権等(預金債権)を差し押さえて滞納会社の租税債権に充当したことが発端。

 そこで関連会社側が、預金債権は滞納会社ではなく関連会社に帰属すると主張して、不当利得返還請求権に基づく預金債権の額及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めて提訴したという事案である。

 一審の東京地裁はまず、預金債権の帰属は預金の原資の出捐関係、預金開設者、出捐者の預金開設者に対する委任内容、預金口座名義、預金通帳及び届出印の保管状況等の諸要素を総合的に勘案した上で、誰が自己の預金とする意思を有していたかという観点から判断するべきであるとの判断基準を示した。

 その上で、預金通帳は、1)開設者が滞納会社の代表取締役の配偶者であり、2)滞納会社において管理されていたこと(預金通帳の保管状況)、3)主として滞納会社と取引先との間で行われていた取引に基づく金銭の入出金のために用いられていたこと(入出金状況)、4)預金口座の名義が滞納会社と同じ読み方であること(預金口座名義)などを併せ考えれば、預金債権は滞納会社が自己の預金とする意思を有していたと認めるのが相当であると判示した。

 また、預金口座における入出金の相手方である取引先数社が取引相手は関連会社ではなく滞納会社であるとの認識を有していた旨の認定事実の下では、預金口座は主として滞納会社と取引先との間で行われていた取引に基づく金銭の入出金のために用いられていたと判断するのが相当とした。その結果、預金口座が関連会社側に帰属するということはできず、預金口座を差し押さえて滞納税金に充当したことについて関連会社側に損失が生じたと認めることはできないと判示して、請求を棄却した。

 一審の判決内容を不服とした関連会社側が更にその取消しを求めて控訴したわけだが、控訴審も一審判決の判断基準及び帰属認定を維持した上で、預金債権及びこれに対する遅延損害金の請求は理由がないから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって控訴には理由がないと判示して、棄却した。関連会社側は控訴審判決を不服として上告受理申立中である。

(東京高裁2020.01.15判決、令和元年(ネ)第3150号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 租税債権の徴収を巡って、滞納会社と読み方が同じである関連会社名義の預金債権が滞納会社側に帰属するのか、関連会社側に帰属するのかその判断が争われた事件で東京高裁(村上正敏裁判長)は、滞納会社において管理され、主として滞納会社と取引先との間で行われていた取引に基づく金銭の入出金のために用いられていたことが認められるなどの事情の下では滞納会社に帰属すると判断して一審の判断を支持、控訴を棄却した。 この事件は、LED照明等の設計開発・製造・販売等を目的とする株式会社(滞納会社)の主宰者が、妻を代表取締役とする株式会社(表記は異なるが滞納会社の商号の読み方と同一の法人)名義の普通預金口座を、 東京国税局長が滞納会社に対する租税債権の徴収のために、その預金口座に係る預金払戻請求権等(預金債権)を差し押さえて滞納会社の租税債権に充当したことが発端。 そこで関連会社側が、預金債権は滞納会社ではなく関連会社に帰属すると主張して、不当利得返還請求権に基づく預金債権の額及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めて提訴したという事案である。 一審の東京地裁はまず、預金債権の帰属は預金の原資の出捐関係、預金開設者、出捐者の預金開設者に対する委任内容、預金口座名義、預金通帳及び届出印の保管状況等の諸要素を総合的に勘案した上で、誰が自己の預金とする意思を有していたかという観点から判断するべきであるとの判断基準を示した。 その上で、預金通帳は、1)開設者が滞納会社の代表取締役の配偶者であり、2)滞納会社において管理されていたこと(預金通帳の保管状況)、3)主として滞納会社と取引先との間で行われていた取引に基づく金銭の入出金のために用いられていたこと(入出金状況)、4)預金口座の名義が滞納会社と同じ読み方であること(預金口座名義)などを併せ考えれば、預金債権は滞納会社が自己の預金とする意思を有していたと認めるのが相当であると判示した。 また、預金口座における入出金の相手方である取引先数社が取引相手は関連会社ではなく滞納会社であるとの認識を有していた旨の認定事実の下では、預金口座は主として滞納会社と取引先との間で行われていた取引に基づく金銭の入出金のために用いられていたと判断するのが相当とした。その結果、預金口座が関連会社側に帰属するということはできず、預金口座を差し押さえて滞納税金に充当したことについて関連会社側に損失が生じたと認めることはできないと判示して、請求を棄却した。 一審の判決内容を不服とした関連会社側が更にその取消しを求めて控訴したわけだが、控訴審も一審判決の判断基準及び帰属認定を維持した上で、預金債権及びこれに対する遅延損害金の請求は理由がないから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって控訴には理由がないと判示して、棄却した。関連会社側は控訴審判決を不服として上告受理申立中である。(東京高裁2020.01.15判決、令和元年(ネ)第3150号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.12.14 15:43:46