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柔道整復師の免許取得のための授業料の必要経費性を否定

 柔道整復師を雇用して柔道整復を行わせる形態で接骨院を開業していた者が、自らが柔道整復師の資格を有していなかったため、柔道整復師の免許を取得して柔道整復も行うことを目的に支出した柔道整復師養成施設への授業料等が必要経費に該当するか否かの判断が争われた事件で大阪高裁(石井寛明裁判長)は、事業による収入の維持又は増加をもたらす効果を有するものではなく、接骨院を経営するために免許を取得することが必須ではないことを考え合わせれば、支出した授業料等は必要経費に該当しないと判断して原審の判決内容を支持、棄却した。なお、納税者側はこの控訴審の判決内容を不服として、最高裁判所に上告受理を申立中である。

 この事件は、いわゆるカイロプラクティック等を行う一方で、柔道整復師を雇用して柔道整復を行わせるという形態で接骨院を開業していた者が、自らも免許を取得して柔道整復を行うことができれば、経営の安定及び事業拡大を図ることができると考え、柔道整復師養成施設である専門学校に通学し、その専門学校に支払った授業料等を事業所得の必要経費に算入して所得税等の確定申告をしたのが発端となった。

 この申告に対して原処分庁が必要経費には該当しないと判断、更正処分等をしてきたため、その取消しを求めて提訴したという事案であるが、原審が必要経費として認めることはできないと判示して棄却したことから、原審の判決内容の取消しを求めて控訴していたという事案で、争点は資格取得費として支払った金額が所得税法37条1項に規定された必要経費に該当するか否かである。

 控訴審はまず、事業による収入を得るために直接に要した費用でないことは明らかであるから、所得を生ずべき業務について生じた費用に該当するか否かを検討する必要があると指摘した上で、業務との関連性及びその遂行上の必要性の有無はその業務の具体的な内容・性質等を前提に、事業者がその費用を支出した目的、支出が業務に有益なものとして収入の維持又は増加をもたらす効果があるか否か及びその程度等の諸事情を考慮して判断することが相当であると指摘。

 その結果、自らは免許を有さずに柔道整復に該当しないカイロプラクティック等を行うとともに、柔道整復師を雇用して柔道整復を行わせるという形態をとっている整骨院の収入の維持又は増加をもたらす効果を有するものではなく、接骨院を経営するために免許取得が必須ではないことを考えれば、支払額の全額を必要経費に算入することができるとは認められないし、また必要経費に算入できる部分が特定されているともいえないことから、必要経費に該当するとは言えないと判示、原審の判断を支持して控訴を棄却した。

(2020.05.22大阪高裁判決、令和元年(行コ)第167号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 柔道整復師を雇用して柔道整復を行わせる形態で接骨院を開業していた者が、自らが柔道整復師の資格を有していなかったため、柔道整復師の免許を取得して柔道整復も行うことを目的に支出した柔道整復師養成施設への授業料等が必要経費に該当するか否かの判断が争われた事件で大阪高裁(石井寛明裁判長)は、事業による収入の維持又は増加をもたらす効果を有するものではなく、接骨院を経営するために免許を取得することが必須ではないことを考え合わせれば、支出した授業料等は必要経費に該当しないと判断して原審の判決内容を支持、棄却した。なお、納税者側はこの控訴審の判決内容を不服として、最高裁判所に上告受理を申立中である。 この事件は、いわゆるカイロプラクティック等を行う一方で、柔道整復師を雇用して柔道整復を行わせるという形態で接骨院を開業していた者が、自らも免許を取得して柔道整復を行うことができれば、経営の安定及び事業拡大を図ることができると考え、柔道整復師養成施設である専門学校に通学し、その専門学校に支払った授業料等を事業所得の必要経費に算入して所得税等の確定申告をしたのが発端となった。 この申告に対して原処分庁が必要経費には該当しないと判断、更正処分等をしてきたため、その取消しを求めて提訴したという事案であるが、原審が必要経費として認めることはできないと判示して棄却したことから、原審の判決内容の取消しを求めて控訴していたという事案で、争点は資格取得費として支払った金額が所得税法37条1項に規定された必要経費に該当するか否かである。 控訴審はまず、事業による収入を得るために直接に要した費用でないことは明らかであるから、所得を生ずべき業務について生じた費用に該当するか否かを検討する必要があると指摘した上で、業務との関連性及びその遂行上の必要性の有無はその業務の具体的な内容・性質等を前提に、事業者がその費用を支出した目的、支出が業務に有益なものとして収入の維持又は増加をもたらす効果があるか否か及びその程度等の諸事情を考慮して判断することが相当であると指摘。 その結果、自らは免許を有さずに柔道整復に該当しないカイロプラクティック等を行うとともに、柔道整復師を雇用して柔道整復を行わせるという形態をとっている整骨院の収入の維持又は増加をもたらす効果を有するものではなく、接骨院を経営するために免許取得が必須ではないことを考えれば、支払額の全額を必要経費に算入することができるとは認められないし、また必要経費に算入できる部分が特定されているともいえないことから、必要経費に該当するとは言えないと判示、原審の判断を支持して控訴を棄却した。(2020.05.22大阪高裁判決、令和元年(行コ)第167号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.11.29 16:08:15