「規模ありき」の経済対策 財務省内で高まる懸念 選挙前のバラマキを警戒
衆院選を前に与党からの歳出圧力が強まる中、「規模ありき」の経済対策を懸念する声が財務省内から出ている。新型コロナウイルス対応で政府債務は膨らんでおり、岸田政権の掲げる分配政策が放漫財政につながらないか同省は警戒している。
岸田政権は近く数十兆円規模の経済対策を示し、裏付けとなる2021年度補正予算を衆院選後に成立させる方針だ。岸田文雄首相は自民党総裁選中、家庭の教育費や住宅費の負担を軽くしたり、看護師や介護福祉士、保育士の所得を引き上げたりする施策を掲げており、中間層への分配を手厚くする「岸田カラー」が経済対策にも色濃く反映されそうだ。
安倍晋三政権が打ち出した経済政策「アベノミクス」は、大規模な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略を「3本の矢」としたが、富を国民に行き渡らせる「トリクルダウン」が弱かったとの指摘もあった。岸田政権の経済政策は、経済成長の恩恵を中間層に手厚く配分することで消費を盛り上げ、新たな成長につなげる狙いだ。
こうした分配政策に警戒感を示しているのが財務省だ。予算の査定を担う主計局の幹部は、数十兆円規模の経済対策について「本当に必要な事業の積み上げで数十兆円になるなら分かるが、規模ありきになっている。(日本の潜在的な供給力と実際の需要の差を数値化した)GDPギャップを埋めるのに数十兆円もの公費は必要ない」と話すなど、選挙前の「バラマキ政策」への警戒を隠さない。
20年度はコロナ対応のために3回の補正予算を組んだ結果、歳出総額は過去最大の175兆円に膨らんだ。国と地方の長期債務残高は1200兆円に迫る。コロナで苦境にある人々への対応は待ったなしだが、次世代のためにワイズスペンディング(賢い支出)を徹底する必要がある。
提供元:エヌピー通信社