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税理士業務の懲戒処分の取消請求は訴えの利益を欠くと判断、却下

 公認会計士で税理士業を営んでいた者に対する業務停止の懲戒処分の取消しを求めて争われた事件で大阪地裁(松永栄治裁判長)は、税理士業務の停止処分の業務停止期間経過後もなお同処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があるとは認められず、処分の業務停止期間は既に経過していることから同処分の取消しを求める訴えの利益は認められないと判断、同処分の取消しを求める訴えは訴えの利益を欠く不適法なものであるとして却下した。

 この事件は、公認会計士で税理士業を営んでいた者(原告)が、自己の所有するマンションの一室及びその敷地利用権(所有権)の売却をしたことから、租税特別措置法35条に基づく居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用があることを前提に課税長期譲渡所得金額を0円とする所得税の確定申告をしたものがそもそもの発端となった。

 その結果、財務大臣から、マンションを主として居住の用に供していないにもかかわらず譲渡所得金額を不正に圧縮して申告したなどと判断され、業務停止3ヵ月の懲戒処分を受けたことから、財務大臣(国)を相手に懲戒処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 つまり、税理士懲戒処分の取消しを求める(第一事件)とともに、違法な懲戒処分により名誉等が侵害されたなどとして損害賠償請求(第二事件)をした事案であるが、国側は第一事件に係る訴えについては訴えの利益を欠く不適法なものであるとして却下を求めるとともに、第二事件に係る損害賠償請求については棄却する旨の裁判を求めていた。

 これに対して判決は、最高裁判所昭和56年12月10日第二小法廷判決を引き合いに、懲戒処分によりその処分を受けた者の名誉や信用等が損なわれる可能性があるとしても、それはその処分の法的効果ではなく、事実上の影響にすぎないというべきであり、この理は懲戒処分についても同様に妥当するとして原告側の主張を斥けた。

 また、懲戒処分が取り消されなければいわゆる受勲対象者から除外されるという原告側の主張についても、受勲自体いかなる特権も伴わないものである上、結局、懲戒処分を受けたことが将来勲章を受けられるかどうかの決定において事情として考慮される可能性があるというにすぎないものであるから、いずれにせよそれを採用することはできないとして斥けた。

 その結果、税理士業務の停止処分については、その業務停止期間経過後においてもなお同処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があるとは認められないと指摘するとともに、懲戒処分に伴う業務停止期間は既に経過しているから、原告側には懲戒処分の取消しを求める訴えの利益は認められないと判示して却下した。

 なお、第二事件についても、原告側の行為は信用失墜行為の一類型としての仮装行為による自己脱税と評価すべきものであり、原告側が主張する事実誤認があったとも、手続上の重大な瑕疵があったともいえないと指摘した上で、懲戒処分について裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認めることもできないことから、国家賠償法上違法ということはできないと判示して棄却した。

(大阪地裁2018.08.02判決、平成27年(行ウ)第513号(第一事件)、平成28年(行ウ)第124号(第二事件))

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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10月1日更新

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 公認会計士で税理士業を営んでいた者に対する業務停止の懲戒処分の取消しを求めて争われた事件で大阪地裁(松永栄治裁判長)は、税理士業務の停止処分の業務停止期間経過後もなお同処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があるとは認められず、処分の業務停止期間は既に経過していることから同処分の取消しを求める訴えの利益は認められないと判断、同処分の取消しを求める訴えは訴えの利益を欠く不適法なものであるとして却下した。 この事件は、公認会計士で税理士業を営んでいた者(原告)が、自己の所有するマンションの一室及びその敷地利用権(所有権)の売却をしたことから、租税特別措置法35条に基づく居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用があることを前提に課税長期譲渡所得金額を0円とする所得税の確定申告をしたものがそもそもの発端となった。 その結果、財務大臣から、マンションを主として居住の用に供していないにもかかわらず譲渡所得金額を不正に圧縮して申告したなどと判断され、業務停止3ヵ月の懲戒処分を受けたことから、財務大臣(国)を相手に懲戒処分の取消しを求めて提訴したという事案である。 つまり、税理士懲戒処分の取消しを求める(第一事件)とともに、違法な懲戒処分により名誉等が侵害されたなどとして損害賠償請求(第二事件)をした事案であるが、国側は第一事件に係る訴えについては訴えの利益を欠く不適法なものであるとして却下を求めるとともに、第二事件に係る損害賠償請求については棄却する旨の裁判を求めていた。 これに対して判決は、最高裁判所昭和56年12月10日第二小法廷判決を引き合いに、懲戒処分によりその処分を受けた者の名誉や信用等が損なわれる可能性があるとしても、それはその処分の法的効果ではなく、事実上の影響にすぎないというべきであり、この理は懲戒処分についても同様に妥当するとして原告側の主張を斥けた。 また、懲戒処分が取り消されなければいわゆる受勲対象者から除外されるという原告側の主張についても、受勲自体いかなる特権も伴わないものである上、結局、懲戒処分を受けたことが将来勲章を受けられるかどうかの決定において事情として考慮される可能性があるというにすぎないものであるから、いずれにせよそれを採用することはできないとして斥けた。 その結果、税理士業務の停止処分については、その業務停止期間経過後においてもなお同処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があるとは認められないと指摘するとともに、懲戒処分に伴う業務停止期間は既に経過しているから、原告側には懲戒処分の取消しを求める訴えの利益は認められないと判示して却下した。 なお、第二事件についても、原告側の行為は信用失墜行為の一類型としての仮装行為による自己脱税と評価すべきものであり、原告側が主張する事実誤認があったとも、手続上の重大な瑕疵があったともいえないと指摘した上で、懲戒処分について裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認めることもできないことから、国家賠償法上違法ということはできないと判示して棄却した。(大阪地裁2018.08.02判決、平成27年(行ウ)第513号(第一事件)、平成28年(行ウ)第124号(第二事件))提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.09.27 15:53:42