与野党「規模ありき」の経済対策 GDPギャップの問題点
自民党総裁選や衆院選を前に、与野党から大型経済対策案が相次ぎ打ち出されている。「数十兆」「30兆」などと「規模ありき」の経済対策論が相次ぐ中、その根拠とされる需給ギャップ(GDPギャップ)について、経済対策との因果関係を疑問視する声が政府内から上がっている。
GDPギャップは、日本経済の需要と潜在的な供給力の差を示す指標。需要よりも供給力が多いとGDPギャップがマイナスとなり、企業の設備や人員が過剰で物余りの状態になって景気の足を引っ張るとされる。逆に需要の方が多いとプラスになり物価が上がる原因となる。新型コロナウイルス渦で個人消費が落ち込む中、政府が公共事業や現金給付などで需要を調整してGDPギャップを解消することで、景気押し上げにつなげる狙いだ。
自民党の世耕弘成・参院幹事長は8月の記者会見で、経済対策のための補正予算編成について「GDPギャップが大体30兆円あるから、それを埋める規模にするのは当然だ」と述べた。内閣府の試算で2021年4~6月期のGDPギャップは約22兆円のマイナスとなっており、世耕氏は不足分と同規模の「真水(財政出動)」が必要だと主張した。
だが、こうした訴えにある財務省幹部は「経済対策でGDPギャップを埋めるという発想がそもそも間違いだ」と疑問を呈する。幹部は「新型コロナが収束するまでは行動を抑制して需要を増やしちゃいけない時期なんだから、そんな時に30兆円の真水を投入して消費を喚起しても意味がないし、コロナ対策の需要抑制策とも矛盾する」と指摘。「コロナで経済的に困窮する人たちを救済する政策と、需要を喚起するための景気刺激策は、分けて考えないといけない」と冷静な議論を呼び掛けている。
提供元:エヌピー通信社