公売隣接地の所有者に請求人適格はないと判断、棄却
滞納法人所有の不動産の公売公告を巡って、公売不動産の隣接地の所有者としての権利が侵害されているか、公売公告処分の取消請求できる請求人適格が認められるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、公売不動産の隣接地の所有者である審査請求人は隣接地の所有権を主張する者にとどまり、差押えに係る財産について所有権を主張していないことになるから、請求人適格は認められないと判断、取消請求を棄却した。
この事件は、原処分庁が、一般土木建設業、貸ビル、貸マンション業及び管理業務等を目的とする法人の滞納国税を徴収するために滞納法人が所有する不動産の公売公告処分及び最高価申込者の決定処分を行ったところ、一般土木建築の設計施工請負等を目的とする法人(審査請求人)が公売不動産の隣接地の実質所有者は請求人であり、隣接地の一部が公売不動産に含まれているため、請求人の権利が侵害されていることを理由に、その全部取消しを求めて審査請求したという事案である。
つまり請求人側は、公売不動産の隣接地の実質所有者は請求人であり、その隣接地の一部が公売不動産に含まれているため、請求人の権利が侵害されている旨主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。
裁決はまず、審査請求の審理に当たっては、請求人が不服申立てをすることができる資格を有するか否かを判断する必要があり、不服申立てをすることができる「国税に関する法律に基づく処分に不服がある者」とは、その処分によって直接自己の権利又は法律上の利益を侵害された者であることを要すると解釈。
また、換価する財産の範囲等を定めた国税徴収法89条1項は、公売処分は差し押さえた財産について行うものであるところ、差押処分の効力は嘱託登記により差押登記が付された地番以外の土地に及ぶと解することはできず、その地番の土地にしか発生しないことから、公売処分もまた公法上の一筆の土地を対象として行われることになるとも指摘した。
そのため、差押処分で特定された地番の土地に、請求人が所有する公売不動産の隣接地の地番の土地が含まれることは法律上あり得ないことであるから、請求人は公売処分によって直接自己の権利又は法律上の利益が侵害された者とは認められず、国税に関する法律に基づく処分に不服がある者に該当しないという判断をした。
結局、公売処分の取消請求において、国税徴収法上、土地の差押手続は土地の地番ごとに行うより他なく、差押処分の効力もその地番の土地にしか及ばないから、公売不動産の隣接地所有者である請求人はその隣接地の所有権を主張する者にとどまり、差押えに係る財産について所有権を主張していないことになるから、請求人適格は認められないとして請求を棄却した。
(2020.12.22 国税不服審判所裁決)
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