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船舶の原告の鑑定価格を精通者意見価格と参酌、請求を認容

 純資産価額方式で評価すべき取引相場のない株式を贈与で取得したことを巡って、贈与を受けた株式の評価額つまり算定の基礎となる純資産である船舶の鑑定価格が争われた事件で東京地裁(清水知恵子裁判長)は、外国子会社においては資産額よりも負債額のほうが上回っている結果、外国株式等の価額はいずれも0円となって、贈与税の課税価格に係る贈与税額は生じないことになると判断、原処分の取消しを求めた納税者側の請求を認容する判決を言い渡した。

 この事件は、海上運送業等を目的とする法人の代表取締役が発行済み株式の全てを母親が保有する外国子会社の株式の贈与を母親から受けたのがそもそもの発端。しかし、贈与税の課税価格に係る贈与税額はないと判断、法定申告期限までに贈与税の申告書を提出しなかったところ、原処分庁が外国子会社の所有に係る船舶の価額を適正に評価すると、課税価格が40億円超、納付すべき税額は21億円超になると認定、贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をしてきたわけだ。

 そこで代表取締役側が、原処分は船舶の評価を誤った違法なものであると主張して、その取消しを求めて提訴したという事案である。

 つまり、代表者側は、贈与を受けた前年に発生したいわゆるリーマンショック以降、船舶の価値が大幅に下落していたため、船舶を所有する外国子会社の株式の価値は0円になったと考え、これを機に、母が有する外国子会社の株式の贈与を受けることにしたというわけだが、原処分庁側は、船舶の一部について取引事例比較法による価格鑑定を行い、その余については船舶の建造に実際に要した価格(建造船価)に対し、船種に応じた調整率及び建造時からの経過年数による調整を行う方法(建造船価償却法)による価格鑑定に基づく評価額を主張して、納税者側の訴えの棄却を求めた。

 これに対して判決は、原処分庁が主張する鑑定価格は、係争船舶(67隻)のうち、取引事例比較法が適用された船舶のうちでも残存傭船期間が3年以下である船舶に限ってこれを精通者意見価格として参酌することができるものの、その余の船舶については代表取締役側が主張する鑑定価格を精通者意見価格として参酌することができると指摘。

 その上で、これらの価格に当事者間に争いのない売却船舶の価額を加えると、全70隻の船舶の評価額は1700億円余となるが、外国子会社においては資産額よりも負債額のほうが上回ることになるため、外国株式等の価額はいずれも0円となって、贈与税の課税価格に係る贈与税額はないことになるから、原処分は違法であり、原処分の取消しを求めた請求は認容されるべきという判断を示した。

 つまり、原告側の鑑定価格を精通者意見価格として参酌することができるという判断を示して、原処分庁側の主張を斥けた事案である。

(2020.10.01東京地裁判決、平成28年(行ウ)第413号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 純資産価額方式で評価すべき取引相場のない株式を贈与で取得したことを巡って、贈与を受けた株式の評価額つまり算定の基礎となる純資産である船舶の鑑定価格が争われた事件で東京地裁(清水知恵子裁判長)は、外国子会社においては資産額よりも負債額のほうが上回っている結果、外国株式等の価額はいずれも0円となって、贈与税の課税価格に係る贈与税額は生じないことになると判断、原処分の取消しを求めた納税者側の請求を認容する判決を言い渡した。 この事件は、海上運送業等を目的とする法人の代表取締役が発行済み株式の全てを母親が保有する外国子会社の株式の贈与を母親から受けたのがそもそもの発端。しかし、贈与税の課税価格に係る贈与税額はないと判断、法定申告期限までに贈与税の申告書を提出しなかったところ、原処分庁が外国子会社の所有に係る船舶の価額を適正に評価すると、課税価格が40億円超、納付すべき税額は21億円超になると認定、贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をしてきたわけだ。 そこで代表取締役側が、原処分は船舶の評価を誤った違法なものであると主張して、その取消しを求めて提訴したという事案である。 つまり、代表者側は、贈与を受けた前年に発生したいわゆるリーマンショック以降、船舶の価値が大幅に下落していたため、船舶を所有する外国子会社の株式の価値は0円になったと考え、これを機に、母が有する外国子会社の株式の贈与を受けることにしたというわけだが、原処分庁側は、船舶の一部について取引事例比較法による価格鑑定を行い、その余については船舶の建造に実際に要した価格(建造船価)に対し、船種に応じた調整率及び建造時からの経過年数による調整を行う方法(建造船価償却法)による価格鑑定に基づく評価額を主張して、納税者側の訴えの棄却を求めた。 これに対して判決は、原処分庁が主張する鑑定価格は、係争船舶(67隻)のうち、取引事例比較法が適用された船舶のうちでも残存傭船期間が3年以下である船舶に限ってこれを精通者意見価格として参酌することができるものの、その余の船舶については代表取締役側が主張する鑑定価格を精通者意見価格として参酌することができると指摘。 その上で、これらの価格に当事者間に争いのない売却船舶の価額を加えると、全70隻の船舶の評価額は1700億円余となるが、外国子会社においては資産額よりも負債額のほうが上回ることになるため、外国株式等の価額はいずれも0円となって、贈与税の課税価格に係る贈与税額はないことになるから、原処分は違法であり、原処分の取消しを求めた請求は認容されるべきという判断を示した。 つまり、原告側の鑑定価格を精通者意見価格として参酌することができるという判断を示して、原処分庁側の主張を斥けた事案である。(2020.10.01東京地裁判決、平成28年(行ウ)第413号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.09.06 16:11:24