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必要かつ合理的なものではなく債務の免除に該当と判断

 滞納者である代表取締役等がその法人から取得した求償債権と法人からの借入金債務を対当額で相殺した後の残額が債務免除されたことが、第二次納税義務に係る債務の免除に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(市原義孝裁判長)は、実質的にみてそれが「必要かつ合理的な理由」に基づくものであると認めることはできないことから債務の免除に該当すると判断して、法人側の請求を斥けた。

 この事件は、原処分庁が酒類の製造及び販売等を目的とする法人が過去に代表取締役であった者と取締役であった者から同法人に有していた各求償債権の債務免除を受けたと認定した上で、国税徴収法39条に基づき同法人に対し、滞納者である代表取締役らの各国税について、第二次納税義務に係る納付告知書による告知処分をしてきたのが発端。そこで法人側が各告知処分は違法であるとして、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 法人側は、立法趣旨に鑑みれば無償譲渡等の処分とは実質的に「詐害行為又はこれに準ずる行為」に当たるものに限定されるべきであり、具体的には、第三者に対して「異常な利益」を与えるものを指すが、それに該当するものであっても、実質的にみてそれが「必要かつ合理的な理由」に基づくものであると認められるときは無償譲渡等の処分に該当しないと解すべきであると主張して、原処分の取消しを求めた。

 判決はまず、第二次納税義務の趣旨に鑑みれば、無償譲渡等の処分とは、1)第三者に「異常な利益」を与え、2)実質的にみてそれが「必要かつ合理的な理由」に基づくものとはいえないと評価することができるものを意味すると解釈。

 その上で、各債務免除が実質的な対価関係を有するものか否かについてみると、各債務免除が法人側の選択した企業再生の手続きにとって事実上必要なものではあっても、実質的な対価関係があるなどの事情があると認めることはできないと指摘するとともに、代表者らは各求償債権を実質的に取得しておらず、各債務免除は法人に対し「異常な利益」を与えるものではないという主張は採用することができないとして斥けた。

 また、企業再生による経営状況の改善が必要であったとしても、実質的には代表者らの財産を無償で拠出してされた側面を有すると言わざるを得ず、各求償債権が法人に実質的に帰属しているとみても公平を失しないことから、各債務免除が必要かつ合理的な理由に基づくものであるとする主張も斥け、国税徴収法39条が定める債務の免除に当たると認定して法人側の請求を棄却した。

(2020.11.06 東京地裁判決、令和元年(行ウ)第239号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 滞納者である代表取締役等がその法人から取得した求償債権と法人からの借入金債務を対当額で相殺した後の残額が債務免除されたことが、第二次納税義務に係る債務の免除に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(市原義孝裁判長)は、実質的にみてそれが「必要かつ合理的な理由」に基づくものであると認めることはできないことから債務の免除に該当すると判断して、法人側の請求を斥けた。 この事件は、原処分庁が酒類の製造及び販売等を目的とする法人が過去に代表取締役であった者と取締役であった者から同法人に有していた各求償債権の債務免除を受けたと認定した上で、国税徴収法39条に基づき同法人に対し、滞納者である代表取締役らの各国税について、第二次納税義務に係る納付告知書による告知処分をしてきたのが発端。そこで法人側が各告知処分は違法であるとして、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。 法人側は、立法趣旨に鑑みれば無償譲渡等の処分とは実質的に「詐害行為又はこれに準ずる行為」に当たるものに限定されるべきであり、具体的には、第三者に対して「異常な利益」を与えるものを指すが、それに該当するものであっても、実質的にみてそれが「必要かつ合理的な理由」に基づくものであると認められるときは無償譲渡等の処分に該当しないと解すべきであると主張して、原処分の取消しを求めた。 判決はまず、第二次納税義務の趣旨に鑑みれば、無償譲渡等の処分とは、1)第三者に「異常な利益」を与え、2)実質的にみてそれが「必要かつ合理的な理由」に基づくものとはいえないと評価することができるものを意味すると解釈。 その上で、各債務免除が実質的な対価関係を有するものか否かについてみると、各債務免除が法人側の選択した企業再生の手続きにとって事実上必要なものではあっても、実質的な対価関係があるなどの事情があると認めることはできないと指摘するとともに、代表者らは各求償債権を実質的に取得しておらず、各債務免除は法人に対し「異常な利益」を与えるものではないという主張は採用することができないとして斥けた。 また、企業再生による経営状況の改善が必要であったとしても、実質的には代表者らの財産を無償で拠出してされた側面を有すると言わざるを得ず、各求償債権が法人に実質的に帰属しているとみても公平を失しないことから、各債務免除が必要かつ合理的な理由に基づくものであるとする主張も斥け、国税徴収法39条が定める債務の免除に当たると認定して法人側の請求を棄却した。(2020.11.06 東京地裁判決、令和元年(行ウ)第239号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.08.30 16:27:20