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20年度税収が過去最高 PB黒字化を2年前倒し 甘い見通しとの指摘も

 内閣府は7月21日、経済・財政に関する中長期試算をまとめ、経済財政諮問会議で報告した。新型コロナウイルス対策で国の財政が逼迫している一方、2020年度の税収が過去最高となったことなどを受け、「基礎的財政収支」(プライマリーバランス=PB)の黒字化見込みを2027年度へと前回試算より2年前倒しした。
 政府は政策経費を借金に頼らずどれだけ賄えているかを示すPBについて、国と地方の合計で25年度に黒字化する財政健全化目標を掲げており、6月に閣議決定された「骨太の方針」でもこの目標の堅持を明記している。
 中長期試算は政府が年2回公表しており、今回の試算では、国内総生産(GDP)の成長率が22~24年度は2.2~2.8%、25年度以降は2%程度で推移するとしている「成長実現ケース」の場合、国と地方のPBは25年度に2.9兆円程度の赤字となり、27年度には1.8兆円程度と黒字化すると見込んだ。今年1月に示した見通しから赤字額を4.4兆円減らし、黒字化は29年度から2年前倒しした形。社会保障費の抑制などの歳出改革を続けた場合は25年度の黒字化も視野に入るとしている。
 内閣府は20年度決算概要を反映した税収が過去最高の60.8兆円と、想定より5.7兆円も上振れしたことを大きな理由としている。22年度以降も国・地方で計3.6兆円の税収増を土台として参入した。担当者は「大規模な経済対策などで雇用や事業が守られたことも(税収上振れの)背景にある」と説明する。しかし、税収の上振れには実際は消費増税の影響などもあり、法人税収の増加も輸出が堅調な製造業の大企業が中心だ。中小・零細企業の経営状態は厳しく、先行きは楽観できない。
 加えて試算にはそもそもの甘さも指摘されている。成長率が現状と同水準の1%程度で推移する「ベースラインケース」では、25年度のPB赤字は7.9兆円程度で、27年度以降も6兆円台の赤字が続く見込みで、黒字化は見通せない。しかし、こちらの方がより実態に即しているといえよう。

提供元:エヌピー通信社

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 内閣府は7月21日、経済・財政に関する中長期試算をまとめ、経済財政諮問会議で報告した。新型コロナウイルス対策で国の財政が逼迫している一方、2020年度の税収が過去最高となったことなどを受け、「基礎的財政収支」(プライマリーバランス=PB)の黒字化見込みを2027年度へと前回試算より2年前倒しした。 政府は政策経費を借金に頼らずどれだけ賄えているかを示すPBについて、国と地方の合計で25年度に黒字化する財政健全化目標を掲げており、6月に閣議決定された「骨太の方針」でもこの目標の堅持を明記している。 中長期試算は政府が年2回公表しており、今回の試算では、国内総生産(GDP)の成長率が22~24年度は2.2~2.8%、25年度以降は2%程度で推移するとしている「成長実現ケース」の場合、国と地方のPBは25年度に2.9兆円程度の赤字となり、27年度には1.8兆円程度と黒字化すると見込んだ。今年1月に示した見通しから赤字額を4.4兆円減らし、黒字化は29年度から2年前倒しした形。社会保障費の抑制などの歳出改革を続けた場合は25年度の黒字化も視野に入るとしている。 内閣府は20年度決算概要を反映した税収が過去最高の60.8兆円と、想定より5.7兆円も上振れしたことを大きな理由としている。22年度以降も国・地方で計3.6兆円の税収増を土台として参入した。担当者は「大規模な経済対策などで雇用や事業が守られたことも(税収上振れの)背景にある」と説明する。しかし、税収の上振れには実際は消費増税の影響などもあり、法人税収の増加も輸出が堅調な製造業の大企業が中心だ。中小・零細企業の経営状態は厳しく、先行きは楽観できない。 加えて試算にはそもそもの甘さも指摘されている。成長率が現状と同水準の1%程度で推移する「ベースラインケース」では、25年度のPB赤字は7.9兆円程度で、27年度以降も6兆円台の赤字が続く見込みで、黒字化は見通せない。しかし、こちらの方がより実態に即しているといえよう。提供元:エヌピー通信社
2021.07.29 16:40:37