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住民税の過誤納付金還付等請求事件で控訴審判決を破棄、差戻し

 個人住民税に係る過納金の額に計算誤りがあるか否かの判断が争われた過誤納付金還付等請求事件で最高裁(宮崎裕子裁判長)は、自治体の長の計算に誤りがないとして納税者側の請求を斥けた控訴審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして破棄した上で、還付すべき過納金の額等について更に審理を尽くさせるため控訴審に差戻しを命じる判決を言い渡した。

 この事件は、市が普通徴収に係る個人住民税等並びにその延滞金等について、順次、納付を受け又は滞納処分により徴収した後、住民税の税額を減少させる減額賦課決定をするとともに、過納金が生じたと判断、過納金の還付及び還付加算金の支払いをしたことが発端となった。

 これに対して納税者側が、自治体の長による過納金の額の計算には誤りがあると主張、自治体側に不足分の過納金の還付及び還付加算金の支払を求めるとともに、国家賠償法に基づく損害賠償を求めて提訴したわけだ。

 その結果、控訴審が地方税の賦課決定に基づき滞納処分による徴収がされ、徴収された金銭がその地方税に充当された後、その地方税について減額賦課決定がされた場合、その減額賦課決定に係る税額を超えて徴収された金銭は徴収の時点から法律上の原因を欠いていたものであるから、そのまま過納金として還付されるべきであり、その徴収当時他に滞納税が存在したときであっても、他の滞納税に充当されたものとして延滞金等を計算する法的根拠は存在しないと判示して納税者側の請求を斥けたため、その判断を不服とした納税者側が上告していたという事案である。

 最高裁はまず、複数年度分の個人住民税を差押えに係る地方税とする滞納処分において、その差押えに係る地方税に配当された金銭であってその後に減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の個人住民税に充当されていたものは、その配当時においてその差押えに係る地方税のうち他の年度分の個人住民税が存在する場合には、その個人住民税に法定充当がされると解釈。

 その上で、自治体の長は複数年度分の市道民税を差押えに係る地方税とする各滞納処分において、その差押えに係る地方税に配当された金銭であって、各減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の個人住民税に充当されていたものにつき、その差押えに係る地方税のうちその配当時に存在していた他の年度分の個人住民税に充当されたものとせず、それぞれ直ちにその金額に相当する過納金が生じたものとして、各減額賦課決定により生じた過納金の額を計算したものであるから、その計算には誤りがあると指摘した。

 その結果、控訴審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることから破棄は免れないと判示、結局、還付すべき過納金の額等について更に審理を尽くさせるため、控訴審に差し戻した。

(2021.06.22最高裁第三小法廷判決、令和2年(行ヒ)第337号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 個人住民税に係る過納金の額に計算誤りがあるか否かの判断が争われた過誤納付金還付等請求事件で最高裁(宮崎裕子裁判長)は、自治体の長の計算に誤りがないとして納税者側の請求を斥けた控訴審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして破棄した上で、還付すべき過納金の額等について更に審理を尽くさせるため控訴審に差戻しを命じる判決を言い渡した。 この事件は、市が普通徴収に係る個人住民税等並びにその延滞金等について、順次、納付を受け又は滞納処分により徴収した後、住民税の税額を減少させる減額賦課決定をするとともに、過納金が生じたと判断、過納金の還付及び還付加算金の支払いをしたことが発端となった。 これに対して納税者側が、自治体の長による過納金の額の計算には誤りがあると主張、自治体側に不足分の過納金の還付及び還付加算金の支払を求めるとともに、国家賠償法に基づく損害賠償を求めて提訴したわけだ。 その結果、控訴審が地方税の賦課決定に基づき滞納処分による徴収がされ、徴収された金銭がその地方税に充当された後、その地方税について減額賦課決定がされた場合、その減額賦課決定に係る税額を超えて徴収された金銭は徴収の時点から法律上の原因を欠いていたものであるから、そのまま過納金として還付されるべきであり、その徴収当時他に滞納税が存在したときであっても、他の滞納税に充当されたものとして延滞金等を計算する法的根拠は存在しないと判示して納税者側の請求を斥けたため、その判断を不服とした納税者側が上告していたという事案である。 最高裁はまず、複数年度分の個人住民税を差押えに係る地方税とする滞納処分において、その差押えに係る地方税に配当された金銭であってその後に減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の個人住民税に充当されていたものは、その配当時においてその差押えに係る地方税のうち他の年度分の個人住民税が存在する場合には、その個人住民税に法定充当がされると解釈。 その上で、自治体の長は複数年度分の市道民税を差押えに係る地方税とする各滞納処分において、その差押えに係る地方税に配当された金銭であって、各減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の個人住民税に充当されていたものにつき、その差押えに係る地方税のうちその配当時に存在していた他の年度分の個人住民税に充当されたものとせず、それぞれ直ちにその金額に相当する過納金が生じたものとして、各減額賦課決定により生じた過納金の額を計算したものであるから、その計算には誤りがあると指摘した。 その結果、控訴審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることから破棄は免れないと判示、結局、還付すべき過納金の額等について更に審理を尽くさせるため、控訴審に差し戻した。(2021.06.22最高裁第三小法廷判決、令和2年(行ヒ)第337号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.07.12 15:56:11