国の20年度税収 60.8兆円で過去最高
国の2020年度の税収が約60.8兆円で過去最高になったと7月5日、財務省が発表した。政府は20年末時点で税収を約55.1兆円と予想していたため、約5.7兆円の上振れとなった。新型コロナウイルスの影響で景気が悪化し、個人消費も低迷している一方で、税収への影響は限定的だった。
これまでの税収の最高額は18年度の約60.4兆円だった。19年度は米中貿易摩擦による世界経済の減速に加え、年度末になってコロナショックが本格化したことで58.4兆円にとどまっていた。20年度は度重なる緊急事態宣言の発令などで個人消費などの落ち込みが大きく、通年の実質GDPも前年度比4.6%減と戦後最悪のマイナス成長だった。
しかし、20年度は法人税と消費税の増収幅が特に大きく、税収全体を押し上げた。約8兆円と見込まれていた法人税収は約11.2兆円と予想より3.2兆円上振れし、19年度と比較すると0.4兆円増えた。消費税収は約21兆円で、19年度より約2.6兆円増加した。
法人税収増加の要因について財務省は「コロナ禍で一部業種では企業収益が大幅に減少する厳しい状況になったものの、『巣ごもり需要』の堅調さや株高を背景に好調な業種もあり下支えした」と説明する。また、コロナの影響を大きく受けたのが飲食や宿泊などのサービス業が中心だったことも大きい。サービス業は中小が多く、コロナ前から所得がゼロ、もしくは赤字で法人税を納めていない企業の割合が高い。国税庁の「会社標本調査」に基づくと、コロナの影響がない18年度の「料理飲食宿泊業」の法人税額は全体の1.3%に過ぎない。このため、法人税収全体に与えた影響は限定的だったとみられる。20年度後半は中国や米国などの景気回復により自動車などの輸出が堅調だった。こうした大企業製造業を中心とした業況回復は法人税の増加に強く寄与したと考えられる。
消費税収の増加は19年10月に税率が引き上げられた影響が反映されたことが大きい。個人消費は低迷しているが、増税の影響はそれを上回るものだった。消費税率の国税分は6.3%から7.8%へ1.5%分引き上げられており、規模にすると単純計算で2割程度膨らむことになる。ここ10年ほどで消費税率が引き上げられる一方で法人税率が引き下げられたため、税収は景気悪化への耐性が増しつつある。
提供元:エヌピー通信社