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控訴審もマイナンバー制度の利用差止請求は理由がないと棄却

 プライバシー権の侵害を理由にいわゆるマイナンバー制度の収集、保存、利用及び提供の差止め等を求める訴訟が相次いでいるが、仙台高裁(小林久起裁判長)も原審の判断を支持、国による個人番号の収集、保存、利用及び提供の行為がプライバシー権を侵害する違法な行為であるとは認められないから請求はすべて理由がないと判示、控訴を棄却した。

 この事件は他の事案と同様に、マイナンバー制度によって憲法13条が保障するプライバシー権が侵害されると主張し、プライバシー権に基づく妨害排除又は妨害予防請求として個人番号の収集、保存、利用及び提供の差止め並びに削除を求めるとともに、国家賠償に基づく11万円(慰謝料10万円及び弁護士費用1万円)の損害賠償と訴状送達の日の翌日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを国に求めて提訴したもの。

 原審の仙台地裁は、個人番号等が正当な目的の範囲を逸脱して収集等されている事実は認められず、番号制度によって個人番号等が正当な目的の範囲を逸脱して収集等される具体的な危険及び収集等によって個人番号等が外部に漏洩する具体的な危険があると認めることもできないと判示して請求を斥けたため、控訴して原審判決の取消しを求めていた事案である。

 控訴審はまず、マイナンバー制度は行政機関等が個人番号の有する個人識別機能を活用し、情報システムを運用して効率的な情報の管理及び利用並びに迅速な情報の授受を行うことができるようにすることにより、行政運営の効率化及び行政分野における公正な給付と負担の確保を図り、手続きの簡素化による国民の負担軽減や本人確認の利便性の向上を得られるようにするという正当な行政目的に基づいて制度が実施され、運用されていると認定。

 その上で、プライバシー権に基づく妨害排除又は妨害予防請求として個人番号の収集、保存、利用及び提供の差止め並びに削除を求め、これらの行為による損害の賠償を求める請求は、国による個人番号の収集、保存、利用及び提供の行為がプライバシー権を侵害する違法な行為であるとは認められないから、請求はすべて理由がないと控訴人らの主張を斥けるとともに、控訴人らの請求を棄却した原審の判決は相当であり、控訴は理由がないとして棄却した。

 マイナンバー制度の利用差止請求訴訟は各地で起きているが、いずれも原審で棄却され、控訴審も原審の判断を支持する傾向にあり、判断が覆る可能性はかなり低いだろう。

(2021.05.27仙台高裁判決、令和2年(ネ)第272号 個人番号利用差止等請求控訴事件)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 プライバシー権の侵害を理由にいわゆるマイナンバー制度の収集、保存、利用及び提供の差止め等を求める訴訟が相次いでいるが、仙台高裁(小林久起裁判長)も原審の判断を支持、国による個人番号の収集、保存、利用及び提供の行為がプライバシー権を侵害する違法な行為であるとは認められないから請求はすべて理由がないと判示、控訴を棄却した。 この事件は他の事案と同様に、マイナンバー制度によって憲法13条が保障するプライバシー権が侵害されると主張し、プライバシー権に基づく妨害排除又は妨害予防請求として個人番号の収集、保存、利用及び提供の差止め並びに削除を求めるとともに、国家賠償に基づく11万円(慰謝料10万円及び弁護士費用1万円)の損害賠償と訴状送達の日の翌日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを国に求めて提訴したもの。 原審の仙台地裁は、個人番号等が正当な目的の範囲を逸脱して収集等されている事実は認められず、番号制度によって個人番号等が正当な目的の範囲を逸脱して収集等される具体的な危険及び収集等によって個人番号等が外部に漏洩する具体的な危険があると認めることもできないと判示して請求を斥けたため、控訴して原審判決の取消しを求めていた事案である。 控訴審はまず、マイナンバー制度は行政機関等が個人番号の有する個人識別機能を活用し、情報システムを運用して効率的な情報の管理及び利用並びに迅速な情報の授受を行うことができるようにすることにより、行政運営の効率化及び行政分野における公正な給付と負担の確保を図り、手続きの簡素化による国民の負担軽減や本人確認の利便性の向上を得られるようにするという正当な行政目的に基づいて制度が実施され、運用されていると認定。 その上で、プライバシー権に基づく妨害排除又は妨害予防請求として個人番号の収集、保存、利用及び提供の差止め並びに削除を求め、これらの行為による損害の賠償を求める請求は、国による個人番号の収集、保存、利用及び提供の行為がプライバシー権を侵害する違法な行為であるとは認められないから、請求はすべて理由がないと控訴人らの主張を斥けるとともに、控訴人らの請求を棄却した原審の判決は相当であり、控訴は理由がないとして棄却した。 マイナンバー制度の利用差止請求訴訟は各地で起きているが、いずれも原審で棄却され、控訴審も原審の判断を支持する傾向にあり、判断が覆る可能性はかなり低いだろう。(2021.05.27仙台高裁判決、令和2年(ネ)第272号 個人番号利用差止等請求控訴事件)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.06.28 16:14:45