税金や銀行からの借金など 災害義援金の差し押さえ禁止に 6度の大災害を経て恒久化
自然災害の被災者に対する義援金が確実に生活再建に使われるよう、税滞納などにかかる差し押さえなどを禁止する法案がこのほど成立した。これまで東日本大震災など5つの災害で義援金の差し押さえを禁止する特別法が成立してきたが、日本弁護士連合会などから恒久化を求める声が上がっていた。
今回成立した災害義援金差押禁止法では、洪水、地震、津波、火山噴火など自然現象から生じた災害をすべて対象としている。また義援金の定義を「被災者または遺族の生活を支援(中略)する等のため自発的に拠出された金銭を原資として、都道府県または市町村が被災者に交付する金銭」と規定し、これらの義援金は、「差し押さえることができない」とした。
自然災害の被災者は生活に大きなダメージを受けるため、収入や資産が著しく損なわれ、税を納められなかったり、また住宅ローンなどの借金を払えなくなったりすることが少なくない。そこで金融機関などが、生活支援のために交付された義援金を差し押さえるケースも散見されていた。
そこで日本弁護士連合会などの提言を受け、被害が甚大な災害では、義援金の差し押さえを禁じる特別立法がされてきた経緯がある。これまで特別法により義援金の差し押さえが禁止されたのは、2011年の東日本大震災、16年の熊本地震、18年の西日本豪雨と大阪府北部地震、19年の東日本台風ほか一連の豪雨、20年の7月豪雨の6回だ。しかしこれ以外の災害では義援金が差し押さえられることもあり、対象となる災害の拡大と一般法化が求められてきたことから、今回の恒久法成立に至った。
なお国税徴収法の第75条では、「差し押さえることができない」財産を限定して列挙している。それによれば税滞納をしても絶対に差し押さえられない財産は表のとおり。
差し押さえが禁止されている財産
①生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳および建具 ②生活に必要な3カ月分の食料と燃料 ③農業を営む人の必要最低限の器具、地下茎、球根、種芋など ④漁業を営む人の必要最低限の漁具、真珠貝、種のり、養殖用の卵、えさ用の小魚など ⑤その他業務に欠くことができない器具 ⑥実印、社印、画家および書家の落款 ⑦礼拝または祭祀に欠くことができない神体、神具、仏具 ⑧家系図、日記、書簡 ⑨勲章、賞杯 ⑩学習に必要な書籍、器具 ⑪文芸、学術、美術、音楽に関する著作物で未公表のもの ⑫義手、盲人安全つえ、補聴器、車いすなど身体を補足するもの ⑬消防法に定められた設備や避難器具 ⑭災害義援金など、別法で定めるもの |
提供元:エヌピー通信社