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住宅敷地と通路を一画地として認定するのが妥当と判示、棄却

 固定資産税に係る土地課税台帳に登録された登録価格の決定の適法性が争われた事件で大阪地裁(松永栄治裁判長)は、住宅敷地及び通路の形状、利用状況等を総合するとこれらの土地は、社会通念に照らして通常一体のものとして取引の対象となるとみるのが適切であり、かつ通路と住宅の敷地とを合わせて一画地とするのが客観的な交換価値への接近方法として合理的であると指摘した上で、自治体の長がした土地に係る画地認定は合理的であるから評価基準違反の違法はないと判示、固定資産税の納税義務者の請求を斥けた。

 この事件は、固定資産税の納税義務者が土地課税台帳に登録された3年度分の土地の登録価格を不服として、固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたのがそもそもの発端。この審査の申出に対して同委員会から、2年度分について棄却する旨の決定を受けたものの、1年度分については申出の日から30日以内に決定がなかった。そこで納税者が、地方自治体を相手に2年度分の決定の取消し、委員会がしたものとみなされるいわゆるみなし決定の取消し、さらに登録価格の決定には国家賠償法上の違法があるとして弁護士費用相当額の支払いを求めて提訴したという事案である。

 納税義務者側は、住宅の敷地と通路とが固定資産事務取扱要領(取扱要領)にいう「同一利用」であるとか「同一使用者が一体的に利用している」とかということはできず、むしろ駐車場の敷地と合わせて一体として画地認定すべきであるから、通路を住宅の敷地と合わせて一画地と認定することは取扱要領に違反するものであるなどと主張して、決定の取消しを求めた。つまり、固定資産税の登録価格決定の適法性が争点となった事案である。

 判決はまず、最高裁平成15年6月26日を引き合いに、土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格が同日における土地の客観的な交換価値を上回れば、その登録価格の決定は違法になると指摘するとともに、登録価格の決定が違法となるのは、登録価格が1)その土地に適用される評価基準の定める評価方法に従って決定される価格を上回るときや2)これを上回るものではないが、その評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものではなく、又はその評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情が存する場合であって、同期日における土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るときであるということができると指摘。

 その結果、住宅の敷地及び通路の形状及び利用状況等を総合すると、これらの土地は社会通念に照らして通常一体のものとして取引の対象となるとみることが適切であり、かつ通路と住宅の敷地とを合わせて一画地とするのが、客観的な交換価値への接近方法として合理的であるということができるとした上で、地方自治体側が行った画地認定は合理的であり、評価基準違反の違法はないというべきであると判示して、取消しを求めた請求を棄却した。

(2020.06.18大阪地裁判決、平成28年(行ウ)第238号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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2021.06.14 16:13:37