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課税仕入れの日は請求権の権利が確定した時点と判示、棄却

 税理士が代表社員等を務める不動産賃貸業等を目的とする合同会社が取得した建物を巡って、課税仕入れを行った日の判断が争われた事件で大阪地裁(松永栄治裁判長)は、売買契約の内容及びその履行状況から判断すると、売買契約の締結日の時点では売買代金請求権が発生していたにとどまり、客観的にみて権利の実現が可能な状態になったとはいうことはできないと認定した上で、建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」は合同会社側が主張する課税期間には属さないと判断、訴えを棄却した。

 この事件は、不動産賃貸業等を営む合同会社が、建物の取得に係る支払対価の額等について、建物及びその敷地に係る売買契約の締結日が課税仕入れを行った日になるという判断から、その日の属する課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含めて消費税等及び法人税の確定申告をしたところ、原処分庁が課税仕入れを行った日は建物の引渡しがあった日であり、合同会社側が主張する課税期間における課税仕入れにはならないため仕入税額控除は認められないとして申告内容を否認、消費税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに法人税の更正処分等をしてきたのが発端となった。

 そこで合同会社側が原処分は違法であると主張して、その取消しを求めて提訴したという事案である。

 合同会社側は、消費税法は独自の経理帳簿を前提とするのではなく、所得税や法人税と同様の経理処理すなわち法人税法における益金や所得税法上の総収入金額の年度帰属と同様の基準でその課税時期を判断すべきであるから、課税仕入れを行った日の判断は引渡日及び契約の効力発生日の双方を基準にすべきであると主張して、原処分の取消しを求めた。

 これに対して判決は、建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」(消法30①)については譲渡人が課税資産の譲渡等を行った日と同義と解するのが相当であると指摘するとともに、最高裁平成5年判決を引き合いに、消費税においてもいわゆる権利確定主義が妥当するという判断を示した。

 その上で、売買契約の履行状況からは、売主が不動産の所有権移転登記手続きをし、合同会社側が不動産の使用収益が可能となった時点でその引渡しがあったというべきであり、建物に係る売買代金請求権が客観的にみて実現可能な状態となった時点すなわち請求権の権利が確定した時点を課税仕入れを行った日であると認めるのが相当と認定した。結局、建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」は合同会社側が主張する課税期間には属さないとして、法人側の主張を悉く斥ける判決を言い渡した。

(2020.06.11 大阪地裁判決、平成30年(行ウ)第149号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 税理士が代表社員等を務める不動産賃貸業等を目的とする合同会社が取得した建物を巡って、課税仕入れを行った日の判断が争われた事件で大阪地裁(松永栄治裁判長)は、売買契約の内容及びその履行状況から判断すると、売買契約の締結日の時点では売買代金請求権が発生していたにとどまり、客観的にみて権利の実現が可能な状態になったとはいうことはできないと認定した上で、建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」は合同会社側が主張する課税期間には属さないと判断、訴えを棄却した。 この事件は、不動産賃貸業等を営む合同会社が、建物の取得に係る支払対価の額等について、建物及びその敷地に係る売買契約の締結日が課税仕入れを行った日になるという判断から、その日の属する課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含めて消費税等及び法人税の確定申告をしたところ、原処分庁が課税仕入れを行った日は建物の引渡しがあった日であり、合同会社側が主張する課税期間における課税仕入れにはならないため仕入税額控除は認められないとして申告内容を否認、消費税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに法人税の更正処分等をしてきたのが発端となった。 そこで合同会社側が原処分は違法であると主張して、その取消しを求めて提訴したという事案である。 合同会社側は、消費税法は独自の経理帳簿を前提とするのではなく、所得税や法人税と同様の経理処理すなわち法人税法における益金や所得税法上の総収入金額の年度帰属と同様の基準でその課税時期を判断すべきであるから、課税仕入れを行った日の判断は引渡日及び契約の効力発生日の双方を基準にすべきであると主張して、原処分の取消しを求めた。 これに対して判決は、建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」(消法30①)については譲渡人が課税資産の譲渡等を行った日と同義と解するのが相当であると指摘するとともに、最高裁平成5年判決を引き合いに、消費税においてもいわゆる権利確定主義が妥当するという判断を示した。 その上で、売買契約の履行状況からは、売主が不動産の所有権移転登記手続きをし、合同会社側が不動産の使用収益が可能となった時点でその引渡しがあったというべきであり、建物に係る売買代金請求権が客観的にみて実現可能な状態となった時点すなわち請求権の権利が確定した時点を課税仕入れを行った日であると認めるのが相当と認定した。結局、建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」は合同会社側が主張する課税期間には属さないとして、法人側の主張を悉く斥ける判決を言い渡した。(2020.06.11 大阪地裁判決、平成30年(行ウ)第149号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.05.17 17:13:32