ADB アジア太平洋税務ハブ新設 途上国の税務人材を育成
アジア太平洋地域の国々に開発資金を融資するアジア開発銀行(ADB、本部・マニラ)は5月3~5日、年次総会をオンライン形式で開催し、新型コロナウイルスの克服に向けて域内経済の回復や持続的な成長を目指すための方策を議論した。
ADBには68の国と地域が加盟し、日本は米国とともに最大の出資国(出資比率15.6%)となっている。1966年の発足以降、総裁は歴代日本人で、現在は財務省国際部門の事務方トップである財務官を4年にわたり務めた浅川雅嗣氏(63)が第10代総裁。ADBに加盟する途上国への融資や無償資金協力、技術協力などが主な業務で、2020年には計269億ドルの融資を行った。
今年の年次総会では、途上国の税務に関する人材の育成などを担う支援の枠組み「域内ハブ」が新設された。世界経済を巡りグローバル化やデジタル化の流れが急速に進む中、加盟各国・地域の租税システムがこうした流れに対応できるよう促す。特に途上国が税収を確保して財政悪化に歯止めをかけられるよう、多国籍企業への国際課税を後押しする。
ADBの年次総会に合わせて、日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)の財務相・中央銀行総裁会議も3日にオンライン形式で開かれた。新型コロナウイルス克服のため域内協力の重要性を確認し、「集中的・包括的な支援政策が引き続き不可欠」などとする共同声明を採択した。
新型コロナウイルス対応で財政が悪化する途上国などへの支援に向けて、金融危機時に外貨を融通する「チェンマイ・イニシアチブ」を拡充するなど、地域金融協力を強化する方針で一致した。会議後に財務省内で記者会見した麻生太郎財務相は「世界経済に不確実性が残る中、地域金融協力の重要性を改めて確認できたことは有意義だった」と述べた。
提供元:エヌピー通信社