保険契約等に関する権利の評価でパブコメ
国税庁は4月28日、「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)に対するパブリックコメントの募集を開始した。取扱いの見直しの対象となったのは、かねてよりその行方が注目されていた保険契約等に関する権利の評価について。
所得税法上、使用者が役員又は使用人に対して生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する保険契約に関する権利を支給した場合には、支給時において保険契約等を解約した場合に支払われることとなる解約返戻金の額で評価することとされている。
他方、「低解約返戻金型保険」や「復旧できる払済保険」など解約返戻金の額が著しく低いと認められる保険契約等については、第三者との通常の取引において低い解約返戻金の額で名義変更等を行うことは想定されないことから、支給時解約返戻金の額で評価することは適当でないと考えられている。
今回見直しの対象となったのは、こうした「解約返戻金の額が著しく低いと認められる保険契約等」の評価方法だ。
法人税基本通達では、保険契約等に関する権利について、支払保険料の一部を前払保険料として資産計上する取扱いが定められているが、このような取扱いを踏まえ、使用者が役員又は使用人に対して解約返戻金の額が著しく低いと認められる次の保険契約等に関する権利を支給した場合には、次の金額で評価することとする。
1)支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の70%に相当する金額未満である保険契約等に関する権利を支給した場合には、支給時資産計上額により評価する。2)復旧することのできる払済保険その他これに類する保険契約等に関する権利を支給した場合には、支給時資産計上額に法人税基本通達9-3-7の2の取扱いにより使用者が損金に算入した金額を加算した金額により評価する。
ここでいう「支給時資産計上額」とは、使用者が支払った保険料の額のうちその保険契約等に関する権利の支給時の直前において前払保険料として法人税基本通達の取扱いにより資産に計上すべき金額をいい、預け金などで処理した前納保険料の金額、未収の剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額を加算した金額をいう。
なお、今回の見直しの対象は法人税基本通達9-3-5の2の適用を受ける保険契約等に関する権利としているが、法人税基本通達の他の取扱いにより保険料の一部を前払保険料に計上する「解約返戻率の低い定期保険等」及び「養老保険」などについては、保険商品の設計などを調査した上で見直しの要否が検討されることとなる。
今回の見直しは、令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給から適用。法人税基本通達9-3-5の2の取扱いは令和元年7月8日以後に締結する保険契約等について適用するとされていることから、同日前に締結した保険契約等は、原則として見直しの対象にならない。
なお、意見募集の締切は令和3年5月27日(木)。電子政府の総合窓口(e-Gov)、FAX、郵便等による提出が可能だがいずれも締切日必着となる。
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)