HOME ニュース一覧 敷金債務相当額の一括取得資産の取得価額への加算を否定

税ニュース

敷金債務相当額の一括取得資産の取得価額への加算を否定

 法人が競売によって土地とともに一括取得した建物に係る取得価額を算出する方法の判断が争われた事件で東京地裁(清水知恵子裁判長)は、敷金債務相当額を建物の購入のために要した費用としてその取得価額に加えることはできないとした上で、消費税等の更正処分の一部は取り消したものの、法人税の更正処分は適法と判示して、法人側のその余の請求を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、飲食店の経営等を目的とする法人が、競売によって一括取得した土地、建物及び附属設備について、落札金額を按分してそれぞれの取得価額を算出し、その額を基に法人税に係る減価償却費の額及び消費税の課税仕入れに係る支払対価の額を計算して法人税及び消費税等の確定申告をしたのが発端となった。

 これに対して原処分庁が、建物及び附属設備の取得価額の計算が誤っているという認定の下に、法人税及び消費税等の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人側がその取消しを求めて提訴したという事案である。

 法人側は、按分計算の基礎となる金額は、落札金額に前所有者から賃貸人の地位を承継したことに伴い負担するに至った敷金返還債務である敷金債務相当額を加算した金額とすべきである旨主張して原処分の取消しを求めた。

 判決はまず、賃貸人が物件の明渡時に支払うこととなる敷金の額は、明渡時までに賃借人の債務不履行が存するか否か、またこれが存するとした場合の債務の額によって異なることから、法人が競売によって建物の所有権を取得した時(及び取得に係る事業年度の終了日)には、法人が将来支払うべき敷金の額は確定していなかったと指摘。その上で、敷金債務相当額は物件の明渡時に賃借人に債務不履行がないとした場合に支払うべき敷金の額に基づくものであるから、これを建物の「購入のために要した費用」として減価償却資産の取得価額に加えることはできないと判断した。

 また、原処分庁側が不動産を構成する各資産に係る固定資産税評価額の価額比を用いて落札金額を按分することが合理的である旨を主張したことに触れ、競売により土地とともに一括取得した建物についての減価償却費の額を計算するために、落札金額を按分して建物の取得価額を算出する方法として固定資産税評価額に基づく価額比を用いることは一般的にはその合理性を肯定し得ないものではないものの、その資産の個別事情を考慮した適正な鑑定が行われ、固定資産税評価額と異なる評価がされた場合には鑑定に基づく評価額による価額比を用いて按分するのが合理的であると判示して、原処分庁側の主張も斥けている。

(2020.09.01東京地裁判決、平成27年(行ウ)第695号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

この記事のカテゴリ

関連リンク

令和2年分の路線価、大阪市内の13地点を減額補正

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


税ニュース
/news/tax/2021/img/img_hojin_01_s.jpg
 法人が競売によって土地とともに一括取得した建物に係る取得価額を算出する方法の判断が争われた事件で東京地裁(清水知恵子裁判長)は、敷金債務相当額を建物の購入のために要した費用としてその取得価額に加えることはできないとした上で、消費税等の更正処分の一部は取り消したものの、法人税の更正処分は適法と判示して、法人側のその余の請求を斥ける判決を言い渡した。 この事件は、飲食店の経営等を目的とする法人が、競売によって一括取得した土地、建物及び附属設備について、落札金額を按分してそれぞれの取得価額を算出し、その額を基に法人税に係る減価償却費の額及び消費税の課税仕入れに係る支払対価の額を計算して法人税及び消費税等の確定申告をしたのが発端となった。 これに対して原処分庁が、建物及び附属設備の取得価額の計算が誤っているという認定の下に、法人税及び消費税等の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人側がその取消しを求めて提訴したという事案である。 法人側は、按分計算の基礎となる金額は、落札金額に前所有者から賃貸人の地位を承継したことに伴い負担するに至った敷金返還債務である敷金債務相当額を加算した金額とすべきである旨主張して原処分の取消しを求めた。 判決はまず、賃貸人が物件の明渡時に支払うこととなる敷金の額は、明渡時までに賃借人の債務不履行が存するか否か、またこれが存するとした場合の債務の額によって異なることから、法人が競売によって建物の所有権を取得した時(及び取得に係る事業年度の終了日)には、法人が将来支払うべき敷金の額は確定していなかったと指摘。その上で、敷金債務相当額は物件の明渡時に賃借人に債務不履行がないとした場合に支払うべき敷金の額に基づくものであるから、これを建物の「購入のために要した費用」として減価償却資産の取得価額に加えることはできないと判断した。 また、原処分庁側が不動産を構成する各資産に係る固定資産税評価額の価額比を用いて落札金額を按分することが合理的である旨を主張したことに触れ、競売により土地とともに一括取得した建物についての減価償却費の額を計算するために、落札金額を按分して建物の取得価額を算出する方法として固定資産税評価額に基づく価額比を用いることは一般的にはその合理性を肯定し得ないものではないものの、その資産の個別事情を考慮した適正な鑑定が行われ、固定資産税評価額と異なる評価がされた場合には鑑定に基づく評価額による価額比を用いて按分するのが合理的であると判示して、原処分庁側の主張も斥けている。(2020.09.01東京地裁判決、平成27年(行ウ)第695号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.04.26 16:20:22