法人税率 40年ぶり方向転換の兆し 米国の引き上げ方針が契機に
米国のバイデン政権の動向をきっかけに、日本でも法人税率に関する議論が活発化しそうだ。日本の法人税率は1980年代から一貫して引き下げられてきており、引き上げにかじを切れば約40年ぶりの政策転換となる。所得税や消費税とのバランスを見る必要もあり、周到な論理武装が必要となる。
バイデン大統領は4月7日、巨額のインフラ投資計画の財源を確保するため、トランプ前政権が21%に引き下げた連邦法人税率を28%に引き上げる方針を表明した。それに先立つ5日、イエレン財務長官は講演で、各国が法人税を引き下げ多国籍企業を自国に誘致しようとする「税率引き下げ競争」をやめるよう呼びかけた。
7日のG20財務省・中央銀行総裁会議では、軽課税国への利益移転による企業の租税回避を防ぐため、法人税共通の「最低税率」の導入などについて、今年半ばまでの合意を目指すことを引き続き確認した。イエレン氏は、これまで議論してきた水準を上回る税率21%を提案しており、交渉進展が期待されている。
こうした動きに麻生太郎財務相は9日の会見で、国際的な税率引き下げ競争に歯止めをかける意義を強調。自民党の下村博文政調会長も「税率引き上げを検討することは、我が国にとっても望ましい」と呼応し、一気に熱を帯びてきた。背景には、税率を下げても内部留保だけ積み上げる日本企業への不満もある。
ただ、政府は「成長志向の法人税改革」として18年に現行の23.2%へ段階的に引き下げたばかり。経済のグローバル化とデジタル化が進む中、成果を上げるには国際協調が欠かせないが、従来方針からの180度方向転換には企業を中心に反発も強そうだ。
提供元:エヌピー通信社