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2021年度税制改正法が成立

 DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業への税優遇を盛り込んだ2021年度税制改正大綱の関連法が、3月26日に可決、成立した。コロナ禍での取りまとめとなった今回の税制改正では、新型コロナウイルスによって収入を減らした人への経済支援のため、様々な税優遇の延長拡充が盛り込まれている。また経済資源の集約化というテーマのもと、中小企業の再編統合を促す制度が新設された。

DX推進に税優遇

 コロナ禍で顕在化したデジタル化の遅れを解消するために、DXに対する税優遇を設ける。具体的には、データを社外に蓄積して利用する「クラウド」サービスの導入などを行った企業への税優遇を設ける。
 個人向けでは、住宅ローンの残債の一部を税金から差し引ける「住宅ローン減税」について、19年10月の消費増税対策として導入された特例を、新型コロナ対策として引き継いで延長した。新築住宅は21年9月末、マンションや中古住宅は同11末月までに契約することを条件に、20年末までとしていた入居期限を22年末まで延長したほか、対象となる床面積が「50平方メートル以上」となっていたところを「40平方メートル以上」に拡大した。ただし床面積の緩和には所得制限も併せて盛り込まれた。

中小の統合再編を後押し

 中小企業の再編統合に向けては、現金ではなく自社株を対価とする「自社株M&A」について、買い手への優遇を新設する。買収対価の80%以上が自社株であるときは、その譲渡益に対する課税を繰り延べる税制を設けた。さらに新たに「経営資源集約化税制」を導入し、M&A時に買い手側が買収費用の一部を準備金として積み立てた時に、これを税務上の損金に算入できるようにする。
 自動車関連では、燃費の良い車を対象に自動車重量税を減免する「エコカー減税」について、21年4月となっていた期限を2年延長する。一方で対象車を絞り込み、税優遇を適用する燃費基準を4割程度厳しくする。その結果、新しい基準の6割を下回るガソリン車やハイブリッド車は、減税の対象から外れることとなる。さらに次世代自動車として一律免税になっていたクリーンディーゼル車は電気自動車に比べて環境性能に劣るとして、経過措置が設けられるものの、原則としてガソリン車と同じ扱いになった。また20年から導入された「環境性能割」では、消費増税に伴う時限措置として導入された軽減税率が新型コロナウイルス対策に引き継がれ、21年12月末まで9カ月延長される。

社債活用の節税策を規制

 オーナー企業に関係のある改正としては、同族会社が発行する社債の利子にかかる所得税について、別法人を挟んで税負担を抑える節税策にフタがされた。
 同族会社の自社株5割超を保有する経営者が、その社債を引き受けて利子を受け取った場合、その所得は雑所得や給与所得などと合算され、最高税率45%の総合課税が適用される。しかし両者の間に別の同族会社を挟むことで自社株保有割合5割の要件をパスすれば、同じ額の利子を受け取っても一律20%の分離課税で済むという〝抜け道〟があった。
 今回の税制改正ではこの節税策について、別法人を間に挟んでいたとしても、最高45%の総合課税が適用されることとなった。利子だけでなく、社債の償還金についても総合課税の対象となる。

贈与の非課税特例は延長

 子・孫への教育資金の一括贈与を非課税にする特例の期限が、23年3月末まで2年延長された。ただし同時に適用要件の厳格化が行われている。
 これまでは、贈与した側が死亡した時点で使い残しがあった時には、①受贈側が23歳未満、②学校等に在学している、③教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受講している――のいずれにも該当しないと、贈与から3年以内の死亡であれば残額が持ち戻されて相続税の対象となっていた。この3年縛りを撤廃し、上記のいずれかの条件を満たさないと、どれだけ前の一括贈与であっても相続財産に持ち戻されることとなった。
 併せて、これまでは持ち戻しの結果として孫やひ孫に相続税が課されても2割加算ルールの対象外であったところが、今後は原則どおり法定相続人以外への財産引き継ぎとして2割加算の対象となる。
 同様に結婚・出産・育児資金の一括贈与の特例についても2年延長された上で、孫やひ孫に相続税が課されるときは2割加算されることが決まった。なお民法改正による成年年齢の引き下げに伴い、受贈側の年齢要件が20歳以上から18歳以上に引き下げられることも盛り込まれている。
 住宅取得資金の一括贈与の特例については、新型コロナ対策として、非課税枠を据え置く。耐震などに優れた住宅は1500万円、一般住宅は1千万円が非課税上限となる。

提供元:エヌピー通信社

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2021.04.01 16:19:43