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国税庁、企業版ふるさと納税による特定CSOへの寄附金税務で文書回答

 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)を活用した地域活動推進や地域課題解決の推進が注目される中、国税庁はこのほど、企業が特定のCSO(NPO法人、市民ボランティア団体等)に寄附することを希望して支出する寄附金に係る法人税法上の取扱いについての文書回答事例を公表した。

 照会者は佐賀県。同県では、県内のNPO法人から新たに企業版ふるさと納税を活用した資金調達に取り組み、更なる活動推進及び地域課題解決の推進を図りたいとの声が上がったことを受け、行政での実施が難しく、CSOだからこそ実施できる地域課題解決につながる取組みを県が寄附事業として設定し、その取組みを行うCSOへの寄附金について企業版ふるさと納税を活用して募集するスキームの構築を検討した。

 スキームは、まず「企業版ふるさと納税活用型CSO地域課題解決支援事業」として県内CSOを対象に企業版ふるさと納税を活用して実施する地域課題解決につながる事業を公募し、県で審査・採択。県で採択事業への寄附募集を広報するとともに、事業実施主体のCSOが採択事業への寄附を企業へ働きかけ、企業がそのCSOが実施する採択事業を指定して県へ寄附を行い、この寄附金を原資として、県から採択事業を実施するCSOへ寄附金として交付する。

 寄附金を支出した企業のうち、県に本店が所在する企業はその支出金額の全額が損金算入となり(法人税法第37条第3項)、県外に本店が所在する企業は、法人住民税や法人事業税の税額控除のほか法人税額の特別控除(租税特別措置法第42条の12の2又は第68条の15の3)の適用により、損金算入による法人税の軽減効果(法人税法第37条第3項)と合わせて最大で寄附額の約9割が軽減され実質的な企業の税負担が約1割になる、というもの。

 一方で、最終的に国等に帰属しないいわゆる「トンネル寄附金」は国等に対する寄付金には該当しないとされていることから(法人税基本通達9-4-4)、本件事業に対する寄付金が国等に対する寄付金等に該当するものと解して差し支えないか国税庁に照会。

 国税庁は、本件事業は、1)本県のホームページ及び本県が作成する企業版ふるさと納税のパンフレットにおいて、CSO地域課題解決支援事業における採択事業の名称及び採択事業の実施主体であるCSOの名称を紹介し、CSO地域課題解決支援事業は本県の事業であることを明示して寄附募集を広く広報すること、2)寄附金交付の対象となる事業は県が開催する審査委員会による審査を経て県が採択するものであること、などの事項から「トンネル寄付」には該当せず、国等に対する寄付金に該当するものと考えられるとした。

企業が特定のCSOに対し寄附することを希望して支出する寄附金に係る法人税法上の取扱いについて

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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2021.03.31 16:04:42