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利益・資本剰余金の双方を原資する配当はその全体が資本の払戻し

 利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当は、その全体が法人税法上の資本の払戻しに該当するか否かの判断が争われた事件で最高裁(深山卓也裁判長)は、その全体が法人税法24条1項3号に定める資本の払戻しに該当すると解釈、更正処分のうち申告額を超える部分は違法であると判示して、原処分庁側の主張を斥けた。ただ、法人側の請求を認容した控訴審の判断は結論において是認することができるものの、その論旨は採用することができないと指摘して、法人税法24条1項3号の解釈も新たに判示した。

 この事件は、外国子会社から資本剰余金及び利益剰余金を原資とする剰余金の配当を受けた内国法人が連結事業年度において、資本剰余金を原資とする部分(資本配当)は法人税法24条1項1号の資本の払戻しに、利益剰余金を原資とする部分(利益配当)は同法23条1項1号の剰余金の配当にそれぞれ該当すると判断して、法人税の連結確定申告をしたのが発端となった。

 この連結申告に対して原処分庁が、配当の全額が資本の払戻しに該当すると判断して、連結事業年度に係る法人税の更正処分をしてきたことから、法人側が更正処分のうち連結申告に係る申告額を超える部分の取消しを求めて提訴したところ、控訴審が法人側の請求を認容したため、原処分庁側が控訴審の判断の取消しを求めて上告したという事案である。

 控訴審は、法人税法24条1項3号が定める資本の払戻しは資本剰余金の額の減少によって行う剰余金の配当、すなわち資本剰余金を原資とする配当をいうと解釈。その結果、資本剰余金及び利益剰余金の双方を原資として配当が行われた場合は、資本剰余金を原資とする配当には同号が、利益剰余金を原資とする配当には同法23条1項1号がそれぞれ適用されることになると指摘した上で、いずれの配当が先に行われたとみるかによって課税関係に差異が生ずるような時は、例外的に配当全体が資本の払戻しと整理され、同法24条1項3号の規律に服すると解されるものの、この事件はそうした差異が生ずる場合ではないと指摘、資本配当には同号が、利益配当には同法23条1項1号がそれぞれ適用されると判示して、法人側の請求を認容したわけだ。

 最高裁はまず、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当は、その全体が法人税法24条1項3号に規定される資本の払戻しに該当するという解釈を示した上で、利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当について、利益剰余金を原資とする部分には法人税法23条1項1号が適用されるとした原審の判断には法人税法の解釈を誤った違法があると指摘した。

 また、株式対応部分金額の計算方法を定めた法人税法施行令23条1項3号の資本の払戻しがされた場合の直前払戻等対応資本金額等の計算方法を定めた部分は、利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当につき、減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度において法人税法の趣旨に適合するものではなく、法人税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるとも指摘している。

 結局、法人側の請求を認容した控訴審の判断の結論は是認できると判示したものの、論旨は結局、採用することができない旨の判決を言い渡した。

(2021.03.11最高裁第一小法廷判決、令和1年(行ヒ)第333号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当は、その全体が法人税法上の資本の払戻しに該当するか否かの判断が争われた事件で最高裁(深山卓也裁判長)は、その全体が法人税法24条1項3号に定める資本の払戻しに該当すると解釈、更正処分のうち申告額を超える部分は違法であると判示して、原処分庁側の主張を斥けた。ただ、法人側の請求を認容した控訴審の判断は結論において是認することができるものの、その論旨は採用することができないと指摘して、法人税法24条1項3号の解釈も新たに判示した。 この事件は、外国子会社から資本剰余金及び利益剰余金を原資とする剰余金の配当を受けた内国法人が連結事業年度において、資本剰余金を原資とする部分(資本配当)は法人税法24条1項1号の資本の払戻しに、利益剰余金を原資とする部分(利益配当)は同法23条1項1号の剰余金の配当にそれぞれ該当すると判断して、法人税の連結確定申告をしたのが発端となった。 この連結申告に対して原処分庁が、配当の全額が資本の払戻しに該当すると判断して、連結事業年度に係る法人税の更正処分をしてきたことから、法人側が更正処分のうち連結申告に係る申告額を超える部分の取消しを求めて提訴したところ、控訴審が法人側の請求を認容したため、原処分庁側が控訴審の判断の取消しを求めて上告したという事案である。 控訴審は、法人税法24条1項3号が定める資本の払戻しは資本剰余金の額の減少によって行う剰余金の配当、すなわち資本剰余金を原資とする配当をいうと解釈。その結果、資本剰余金及び利益剰余金の双方を原資として配当が行われた場合は、資本剰余金を原資とする配当には同号が、利益剰余金を原資とする配当には同法23条1項1号がそれぞれ適用されることになると指摘した上で、いずれの配当が先に行われたとみるかによって課税関係に差異が生ずるような時は、例外的に配当全体が資本の払戻しと整理され、同法24条1項3号の規律に服すると解されるものの、この事件はそうした差異が生ずる場合ではないと指摘、資本配当には同号が、利益配当には同法23条1項1号がそれぞれ適用されると判示して、法人側の請求を認容したわけだ。 最高裁はまず、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当は、その全体が法人税法24条1項3号に規定される資本の払戻しに該当するという解釈を示した上で、利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当について、利益剰余金を原資とする部分には法人税法23条1項1号が適用されるとした原審の判断には法人税法の解釈を誤った違法があると指摘した。 また、株式対応部分金額の計算方法を定めた法人税法施行令23条1項3号の資本の払戻しがされた場合の直前払戻等対応資本金額等の計算方法を定めた部分は、利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当につき、減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度において法人税法の趣旨に適合するものではなく、法人税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるとも指摘している。 結局、法人側の請求を認容した控訴審の判断の結論は是認できると判示したものの、論旨は結局、採用することができない旨の判決を言い渡した。(2021.03.11最高裁第一小法廷判決、令和1年(行ヒ)第333号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.03.22 14:59:02