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路線価が斟酌していない騒音による利用価値の低減を認定

 相続した土地の利用価値が著しく低下している宅地として10%減額評価すべきか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、土地の評価上適用すべき路線価には騒音要因が斟酌されていないこと、また鉄道騒音により利用価値が著しく低下している宅地に該当することなどが認められる事情を考慮すると、騒音により利用価値が著しく低下している宅地に該当すると判断して、原処分を全部取り消した。

 この事件は、相続人である審査請求人が、相続によって取得した土地が広大地に該当すること、また鉄道騒音により利用価値が著しく低下している宅地に該当することなど理由に、相続税の減額請求をしたところ、原処分庁が広大地に該当することは認めたものの、鉄道騒音によって利用価値が著しく低下している宅地には該当しないと判断、更正の請求の一部に関しては請求を認めない旨の更正処分をしてきたわけだ。そこで請求人側が、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 請求人側は、鉄道の列車走行に伴う騒音によってその利用価値が著しく低下している宅地として10%の減額評価をすべきであると主張して原処分の全部取消しを求めた。これに対して原処分庁側は、相続財産である土地について、請求人が行ったという列車走行による騒音測定では騒音による取引金額への影響を確認できないことから、タックスアンサーの「利用価値が著しく低下している宅地の評価(No.4617)」に示された10%減額評価の取扱いを適用することはできない旨主張して、審査請求の棄却を求めた。

 裁決はまず、1)土地の評価上適用すべき路線価には騒音要因が斟酌されていない、2)相続した土地において列車通過時に実際に騒音が生じている、さらに3)土地の所在する自治体では土地の固定資産税評価額の算定上、鉄道騒音補正を適用して算定していたことが認められる――と指摘した上で、相続した土地は、騒音によって取引金額に影響を受ける宅地に該当すると認定した。

 そうした事情を併せて判断すると、相続した土地においては相当程度の騒音が日常的に発生し、騒音により取引金額に影響を受けていたと認めるのが相当であることから、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当するものとして、10%減額評価の取扱いを適用すべきであると判断、原処分の全部を取り消した。つまり、路線価が斟酌していない騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当すると判断したことがポイントになった事案である。

(2020.06.02国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 相続した土地の利用価値が著しく低下している宅地として10%減額評価すべきか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、土地の評価上適用すべき路線価には騒音要因が斟酌されていないこと、また鉄道騒音により利用価値が著しく低下している宅地に該当することなどが認められる事情を考慮すると、騒音により利用価値が著しく低下している宅地に該当すると判断して、原処分を全部取り消した。 この事件は、相続人である審査請求人が、相続によって取得した土地が広大地に該当すること、また鉄道騒音により利用価値が著しく低下している宅地に該当することなど理由に、相続税の減額請求をしたところ、原処分庁が広大地に該当することは認めたものの、鉄道騒音によって利用価値が著しく低下している宅地には該当しないと判断、更正の請求の一部に関しては請求を認めない旨の更正処分をしてきたわけだ。そこで請求人側が、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。 請求人側は、鉄道の列車走行に伴う騒音によってその利用価値が著しく低下している宅地として10%の減額評価をすべきであると主張して原処分の全部取消しを求めた。これに対して原処分庁側は、相続財産である土地について、請求人が行ったという列車走行による騒音測定では騒音による取引金額への影響を確認できないことから、タックスアンサーの「利用価値が著しく低下している宅地の評価(No.4617)」に示された10%減額評価の取扱いを適用することはできない旨主張して、審査請求の棄却を求めた。 裁決はまず、1)土地の評価上適用すべき路線価には騒音要因が斟酌されていない、2)相続した土地において列車通過時に実際に騒音が生じている、さらに3)土地の所在する自治体では土地の固定資産税評価額の算定上、鉄道騒音補正を適用して算定していたことが認められる――と指摘した上で、相続した土地は、騒音によって取引金額に影響を受ける宅地に該当すると認定した。 そうした事情を併せて判断すると、相続した土地においては相当程度の騒音が日常的に発生し、騒音により取引金額に影響を受けていたと認めるのが相当であることから、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当するものとして、10%減額評価の取扱いを適用すべきであると判断、原処分の全部を取り消した。つまり、路線価が斟酌していない騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当すると判断したことがポイントになった事案である。(2020.06.02国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.03.01 15:28:13