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会社の資金による副社長の服飾品等の購入費は給与と認定

 副社長が会社の資金を用いて購入等した服飾品、宝飾品等の購入費が副社長に対する給与等に該当するか否かの判断が争われた事件で大阪地裁(松永栄治裁判長)は、副社長が服飾品等の購入等によりその購入分の利益を会社から得たと認定した上で、給与所得は金銭の形を取る必要はなく、金銭以外の資産又は経済的利益の供与をも含む概念であるというべきであるから、副社長が服飾品等の購入等によりその分の利益を得たことは会社からの給与等に該当すると判示して、会社側の請求を斥けた。

 この事件は、会社の副社長が会社の資金を用いて購入等した服飾品、宝飾品等の額を交際接待費等として処理し、消費税等の確定申告の際に、購入等した額を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて控除対象仕入税額を計算していたが、その後、その購入等の額の一部は副社長に対する貸付金として処理するなどして課税仕入れに係る仕入対価の額から除外して修正申告をしたのがそもそもの発端となった。

 これに対して原処分庁が、副社長が会社の資金を用いて購入等した服飾品、宝飾品等の額は給与等に該当すると判断、源泉所得税等の納税告知処分をするとともに、不納付加算税の賦課決定処分をしてきたため、会社側がその取消しを求めて提訴したという事案である。

 会社側は、法人の認識として利益を供与する意思が必要であり、代表者が容認していただけでは足りないと主張するとともに、購入品等の支出は使途秘匿金の支出に当たるものとして課税されるべきであるのに、原処分庁側は安易に給与等に該当すると認定した旨主張して、納税告知処分の取消しを求めた。

 判決は、個人的な購入の性質を有する副社長による服飾品等の購入等のための代金の支出を会長が容認していた事実が認められるのであり、供与者における認識として欠けるところはないというべきであると指摘。また、副社長が服飾品等によりその分の利益を得たことが給与等に該当するとされる以上、使途秘匿金と課税上の扱いを異にすることに何ら不合理な点はないというべきであるとして、会社側の主張を採用することはできないと斥けた。

 結局、副社長が服飾品等を購入することができたのは、取締役副社長という地位及び権限を有していたからに他ならないと指摘する一方、平成27年の最高裁判決を引き合いに、給与所得は金銭の形を取る必要はなく、金銭以外の資産又は経済的利益の供与をも含む概念であるというべきであると判示、副社長が服飾品等の購入等によりその分の利益を得たことは給与等に該当すると判示して、会社側の請求を棄却した。

(2020.06.25大阪地裁判決、平成30年(行ウ)第80号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 副社長が会社の資金を用いて購入等した服飾品、宝飾品等の購入費が副社長に対する給与等に該当するか否かの判断が争われた事件で大阪地裁(松永栄治裁判長)は、副社長が服飾品等の購入等によりその購入分の利益を会社から得たと認定した上で、給与所得は金銭の形を取る必要はなく、金銭以外の資産又は経済的利益の供与をも含む概念であるというべきであるから、副社長が服飾品等の購入等によりその分の利益を得たことは会社からの給与等に該当すると判示して、会社側の請求を斥けた。 この事件は、会社の副社長が会社の資金を用いて購入等した服飾品、宝飾品等の額を交際接待費等として処理し、消費税等の確定申告の際に、購入等した額を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて控除対象仕入税額を計算していたが、その後、その購入等の額の一部は副社長に対する貸付金として処理するなどして課税仕入れに係る仕入対価の額から除外して修正申告をしたのがそもそもの発端となった。 これに対して原処分庁が、副社長が会社の資金を用いて購入等した服飾品、宝飾品等の額は給与等に該当すると判断、源泉所得税等の納税告知処分をするとともに、不納付加算税の賦課決定処分をしてきたため、会社側がその取消しを求めて提訴したという事案である。 会社側は、法人の認識として利益を供与する意思が必要であり、代表者が容認していただけでは足りないと主張するとともに、購入品等の支出は使途秘匿金の支出に当たるものとして課税されるべきであるのに、原処分庁側は安易に給与等に該当すると認定した旨主張して、納税告知処分の取消しを求めた。 判決は、個人的な購入の性質を有する副社長による服飾品等の購入等のための代金の支出を会長が容認していた事実が認められるのであり、供与者における認識として欠けるところはないというべきであると指摘。また、副社長が服飾品等によりその分の利益を得たことが給与等に該当するとされる以上、使途秘匿金と課税上の扱いを異にすることに何ら不合理な点はないというべきであるとして、会社側の主張を採用することはできないと斥けた。 結局、副社長が服飾品等を購入することができたのは、取締役副社長という地位及び権限を有していたからに他ならないと指摘する一方、平成27年の最高裁判決を引き合いに、給与所得は金銭の形を取る必要はなく、金銭以外の資産又は経済的利益の供与をも含む概念であるというべきであると判示、副社長が服飾品等の購入等によりその分の利益を得たことは給与等に該当すると判示して、会社側の請求を棄却した。(2020.06.25大阪地裁判決、平成30年(行ウ)第80号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.01.08 16:37:45