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特定従事者への給与等支給額が過半に満たないと判断、棄却

 公益法人等が行う公の施設の管理受託事業がその公益法人の特定従事者の生活の保護に寄与しているか否か、つまり収益事業の除外事由に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、生活の保護に寄与しているものとは事業に係る剰余金等の処分可能な金額の相当部分を特定従事者に給与等として支給している場合をいうと指摘した上で、剰余金等の処分が可能な金額はその事業に係る利益の額に特定従事者への給与等支給額を含む人件費支給総額を加算した金額とすることが相当と判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、特定非営利活動法人が実施する市設置の施設管理受託事業は収益事業に含まれないと判断して更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 同法人は広く一般市民を対象に、各種スポーツ大会や教室等の企画運営、団体及び指導者の育成と相互間の連絡調整及び派遣、功労者及び優秀者の表彰、市民へのスポーツ情報の提供、さらにスポーツ振興及び体育施設の運営管理に関する事業を行うとともに、市民の健康増進及び体力の向上を図ってスポーツ精神を養い、明るく豊かな市民生活の形成に寄与することを目的に設立された特定非営利活動法人であるため、そうした判断に至ったようだ。

 そこで公益法人側は、公の施設の管理受託の事業等の一部の業務は、法人税法施行令5条1項に規定する収益事業に該当しない、また請負業として収益事業に該当するのは、その事業に従事する者の総数の半数以上が65歳以上の高齢者(特定従事者)であり、生活の保護に寄与しているものか否かは、税引前当期正味財産増減額に特定従事者への給与等支給額のみを加算した金額に占める特定従事者への給与等支給額の割合により緩やかに判断するのが相当であるから収益事業からは除かれる旨主張して、取消しを求めたわけだ。

 これに対して裁決はまず、収益事業に該当しないと主張する一部の業務は付随行為であり、全体としては一つの請負業であると認定。また、生活の保護に寄与しているものか否かは、事業に係る剰余金等の処分可能な金額の相当部分を特定従事者に給与等として支給しているかどうかによって判定することになることから、剰余金等の処分可能な金額は、税引前当期正味財産増減額に特定従事者への給与等支給額を含む人件費支給総額を加算した金額とすることが相当であると指摘した。

 その結果、この方法により剰余金等の処分可能な金額に占める特定従事者への給与等支給額の割合を計算すると過半にも満たないことから、生活の保護に寄与しているものには該当しないと判断して棄却した。

                       (2020.03.05 国税不服審判所裁決)
 
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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2020.12.01 16:19:55