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国内の事業所に属する資産ではないことから適格現物出資と認定

 米国法人との間で形成したジョイントベンチャー(JV)の枠組みを変更する際に、内国法人がケイマン諸島に設立した特例有限責任パートナーシップ(CLIP)の持分全部を英国の完全子会社に現物出資したことを巡って、その現物出資が適格現物出資に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(古田孝夫裁判長)は、現物出資の対象財産であったCLIP持分は国内にある事業所に属する資産には該当しないことから適格現物出資に該当すると判断、適格現物出資該当性とは無関係な本税の増額部分に対応する部分の取消しを求める部分を除いて、法人側の請求を全て認容する判決を言い渡した。

 この事件は、内国法人が米国法人との間で締結した医薬品用化合物の共同開発等を行うJVを形成する契約に基づき、英国領ケイマン諸島に特例有限責任パートナーシップ(CLIP)を設立した後、JVの枠組みの変更に際し、CLIPのパートナーシップ持分全部を英国完全子会社に現物出資したのがそもそもの発端となった。

 法人側は、この現物出資が適格現物出資に該当することからその譲渡益の計上が繰り延べられると判断して法人税及び復興特別法人税の確定申告をし、その申告に係る繰越欠損金の額を前提に、翌期の法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁が適格現物出資に該当しないことなどを理由に更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、更正処分による繰越欠損金額の減少等を前提に修正申告をした上で更正の請求をしたものの、原処分庁から更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたわけだ。

 そこで法人側が、現物出資は国内にある事業所に属する資産を外国法人に移転したものではないから適格現物出資に該当すると主張して、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、通知処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 現物出資が適格現物出資に該当するか否か、つまり現物出資の対象資産(CLIP)が国内にある事業所に属する資産に該当するか否かが争点になった事案であるが、原処分庁側は現物出資の対象資産はCLIP持分であり、その対象資産は国内にある事業所に属する資産に該当することから適格現物出資には該当しないと主張したのに対し、法人側はCLIPの事業用財産全体により構成される新薬開発事業は国外にある事業所に属し、国外にある事業所で経常的な管理が行われていたことが明らかであるから、国内にある事業所に属する資産には該当せず適格現物出資に該当する旨主張して、原処分の取消しを求めた。

 これに対して判決は、現物出資の対象財産であったCLIP持分はその主たる構成要素であるCLIPの事業用財産(の共有持分)のうち主要なものの経常的な管理が国内にある事業所ではない事業所において行われていたということが認められ、国内にある事業所に属する資産には該当しないというべきであるから、適格現物出資に該当すると判断した。

 その結果、更正処分等の取消しを求めた内国法人側の請求は、法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分のうち適格現物出資該当性とは無関係な本税の増額部分に対応する部分の取消しを求める部分を除けばいずれも理由があると判示して、原処分庁側の主張を斥けた。

(2020.03.11東京地裁判決 平成28年(行ウ)第395号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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2020.10.12 15:58:53