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損害賠償請求権の除斥期間は納税通知書の交付時から進行

 建築当初の家屋に係る評価誤りから、その取消しと固定資産税等が過大に課されたことに伴う過納金及び弁護士費用相当額等の損害賠償を求めた事件で最高裁(宇賀克也裁判長)は、損害賠償請求権の除斥期間は固定資産税等の賦課決定がされ、所有者に納税通知書が交付された時から進行するという解釈を示した上で、納税者側の請求をいずれも棄却した控訴審の判断には法令違反があると指摘、固定資産税等に関する部分を破棄し、除斥期間が経過していない場合の損害額についての審理を更に尽くさせるため原審に差し戻した。

 この事件は、家屋の固定資産税及び都市計画税の納税者が、建築当初の家屋の評価等の誤りから過大な固定資産税等が課されたと主張してその取消しを求めるとともに、国家賠償法に基づく固定資産税等の過納金及び弁護士費用相当額に係る損害賠償を求めて提訴したものの、1審に続き控訴審もその請求を棄却したため、更に上告してその請求をしていたという事案。つまり、損害賠償請求権に係る除斥期間が経過したか否か、具体的にはその起算点である「不法行為の時」とはいつであるかが争われてきたという事案だ。

 控訴審は、各基準年度の価格決定を審査の申出、取消訴訟及び国家賠償請求訴訟で争い得る状態が継続していたと指摘した上で、建築当初の評価上の再建築費評点数の誤りを原因とする「不法行為の時」の起算点とは、建築当初の評価行為及び価格決定時であり、遅くとも同じ年の価格決定時とであるという解釈から、各年度における固定資産税等の過納金相当額等に係る損害賠償請求権は除斥期間の経過によって消滅していると判断して、納税者側の請求を棄却したわけだ。

 最高裁は、固定資産税等の賦課税額が過大であることによる国家賠償責任が問われる場合の違法行為及び損害は、具体的な納税義務を生じさせる賦課決定等を単位に年度毎にみるべきであり、家屋の評価に関する同一の誤りから複数年度の固定資産税等が過大に課された場合でも、これに係る損害賠償請求権は年度毎に発生すると指摘。

 その上で、家屋の評価誤りに基づきある年度の固定資産税等の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権の除斥期間は、その年度の固定資産税等に係る賦課決定がされ、所有者に納税通知書が交付された時から進行するという解釈を示した。

 その解釈の下、固定資産税等の過納金及び弁護士費用相当額に係る損害賠償請求を棄却した原審の判断には法令違反があると判示して、除斥期間が経過したか否か、また除斥期間が経過していない場合の損害額等について更に審理を尽くさせるため、控訴審に差し戻した。

(2020.03.24最高裁第三小法廷判決、平成30年(受)第388号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 建築当初の家屋に係る評価誤りから、その取消しと固定資産税等が過大に課されたことに伴う過納金及び弁護士費用相当額等の損害賠償を求めた事件で最高裁(宇賀克也裁判長)は、損害賠償請求権の除斥期間は固定資産税等の賦課決定がされ、所有者に納税通知書が交付された時から進行するという解釈を示した上で、納税者側の請求をいずれも棄却した控訴審の判断には法令違反があると指摘、固定資産税等に関する部分を破棄し、除斥期間が経過していない場合の損害額についての審理を更に尽くさせるため原審に差し戻した。 この事件は、家屋の固定資産税及び都市計画税の納税者が、建築当初の家屋の評価等の誤りから過大な固定資産税等が課されたと主張してその取消しを求めるとともに、国家賠償法に基づく固定資産税等の過納金及び弁護士費用相当額に係る損害賠償を求めて提訴したものの、1審に続き控訴審もその請求を棄却したため、更に上告してその請求をしていたという事案。つまり、損害賠償請求権に係る除斥期間が経過したか否か、具体的にはその起算点である「不法行為の時」とはいつであるかが争われてきたという事案だ。 控訴審は、各基準年度の価格決定を審査の申出、取消訴訟及び国家賠償請求訴訟で争い得る状態が継続していたと指摘した上で、建築当初の評価上の再建築費評点数の誤りを原因とする「不法行為の時」の起算点とは、建築当初の評価行為及び価格決定時であり、遅くとも同じ年の価格決定時とであるという解釈から、各年度における固定資産税等の過納金相当額等に係る損害賠償請求権は除斥期間の経過によって消滅していると判断して、納税者側の請求を棄却したわけだ。 最高裁は、固定資産税等の賦課税額が過大であることによる国家賠償責任が問われる場合の違法行為及び損害は、具体的な納税義務を生じさせる賦課決定等を単位に年度毎にみるべきであり、家屋の評価に関する同一の誤りから複数年度の固定資産税等が過大に課された場合でも、これに係る損害賠償請求権は年度毎に発生すると指摘。 その上で、家屋の評価誤りに基づきある年度の固定資産税等の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権の除斥期間は、その年度の固定資産税等に係る賦課決定がされ、所有者に納税通知書が交付された時から進行するという解釈を示した。 その解釈の下、固定資産税等の過納金及び弁護士費用相当額に係る損害賠償請求を棄却した原審の判断には法令違反があると判示して、除斥期間が経過したか否か、また除斥期間が経過していない場合の損害額等について更に審理を尽くさせるため、控訴審に差し戻した。(2020.03.24最高裁第三小法廷判決、平成30年(受)第388号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2020.05.25 16:23:19