米国で得た知財利益 現地計上を日本企業に要請
米国の内国歳入庁(IRS)は法人課税の方針変更に伴い、日本の大手企業に対し、米国内で集めたデータなど知的財産が生んだ利益を現地で計上するよう要請した。市場国への税収配分を増やす措置で、法人税の一部を日本から移す。グローバルに事業を展開している日本企業は知的財産を一括管理するケースが多いが、知的財産の管理や税の支払い先を変える流れが強まりそうだ。
IRSは昨年2月に示した新方針で、米国内に拠点がある企業について、ブランドや顧客データが持つ価値を適切に評価し、それに見合った利益を米国できちんと計上する必要性を指摘。具体的に利益を算出する方法も公表した。これに基づき、昨夏にはトヨタ自動車などに対し、米子会社の税務について将来的に見直すよう求めた。
国際的な課税ルールでは、企業の利益のうち営業などによって生じた通常分を超えた範囲については、データやブランド力などの知的財産が生み出したと認定される。また研究開発活動をしている本社がある国だけではなく、大きな市場と消費者が存在して膨大なデータが生まれている場所でも付加価値が生まれていると考え、そこに税収を配分する動きが目立ってきた。
一方で多くの日本企業は本社の研究開発や顧客分析を重視し、知的財産による国外の利益も本社側で計上しており、関連する法人税も日本で支払ってきた。IRSは米国内で生じた利益について、個人データの提供や消費者の認知度といった形で米国民も貢献していると捉えていて、日本の自動車大手などに米国内での貢献も明確に評価することを促した格好だ。日本の国税庁幹部は「しばらくはIRSのルール運用を見守るしかないが、米国と中国という世界の2大市場国に潤いが集中するような事態は避けたい」と警戒している。
提供元:エヌピー通信社