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建築資材の数量積算業務の報酬には源泉徴収義務があると判示

 建築資材の数量を積算する業務を外注して支払った報酬が、源泉徴収義務を負うか否かの判断が争われた事件で東京高裁(定塚誠裁判長)は、第1審の東京地裁の判決内容を支持、源泉徴収義務を免れることにはならないと判示して控訴を棄却した。

 この事件は、建築物の建築設計時の概算書の作成等を業とする納税者が、発注者からの設計図書に基づいて建築資材の数量を積算する業務を外注して報酬を支払っていたところ、原処分庁から未納付の源泉所得税の本税額の納税告知と不納付加算税の賦課決定を受けたことから、源泉所得税及び不納付加算税並びに延滞税を納付した後、納税者側が、外注業務に対して支払った報酬には技術士法2条所定の技術士又は技術士補でない無資格の者に外注したものが含まれていて、その報酬は技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務に対する報酬には当たらないと判断。

 そこで、所得税の源泉徴収義務はなく納付金のうち一定額が誤納金であるという考えから、主位的には国税通則法56条に基づく金員の還付とこれに対する最後の納付日の翌日からの遅延損害金の支払い、また予備的には国家賠償法に基づく損害賠償金と遅延損害金の支払いを求めて提訴したわけだが、第一審の東京地裁が納税者側の主張を全て棄却したことから、その判決内容を不服とした納税者が更に原審判決の取消しを求めて提訴したという事案である。

 これに対して控訴審も、原審の判決内容を支持して、納税者側の主張はいずれも理由がないと棄却した。その理由として、技術士の行う業務と同一の業務とは、技術士法2条1項が技術士の行う業務として定義する「科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」を意味すると一義的に解することができ、これと同旨の所得税基本通達204-18は正当であると判示。

 その上で、源泉徴収の対象となる業務の該当性をその業務の具体的な内容から合理的かつ明確に判断することができるため、課税要件明確主義に反するとはいえないと指摘。また、無資格者に発注した業務すなわち数量積算業務は、基本的な知識と経験で行うことができる業務ではなく、高等の専門的応用能力を必要とする事項についての業務に該当するものであるから、技術士の行う業務と同一の業務に該当することは原審の説示どおりであるとも指摘した。

 結局、数量積算業務は、技術士の行う業務のうちの建築積算業務に含まれる業務であるものの、その業務の内容が技術士の行う業務に該当して報酬を支払う対象とされる以上、それが技術士の行う業務のうち特定の範囲の業務にすぎないからといって源泉徴収義務を免れることにはならないと判示して、控訴を棄却している。

(2019.06.26東京高裁判決、誤納金還付請求控訴事件)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 建築資材の数量を積算する業務を外注して支払った報酬が、源泉徴収義務を負うか否かの判断が争われた事件で東京高裁(定塚誠裁判長)は、第1審の東京地裁の判決内容を支持、源泉徴収義務を免れることにはならないと判示して控訴を棄却した。 この事件は、建築物の建築設計時の概算書の作成等を業とする納税者が、発注者からの設計図書に基づいて建築資材の数量を積算する業務を外注して報酬を支払っていたところ、原処分庁から未納付の源泉所得税の本税額の納税告知と不納付加算税の賦課決定を受けたことから、源泉所得税及び不納付加算税並びに延滞税を納付した後、納税者側が、外注業務に対して支払った報酬には技術士法2条所定の技術士又は技術士補でない無資格の者に外注したものが含まれていて、その報酬は技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務に対する報酬には当たらないと判断。 そこで、所得税の源泉徴収義務はなく納付金のうち一定額が誤納金であるという考えから、主位的には国税通則法56条に基づく金員の還付とこれに対する最後の納付日の翌日からの遅延損害金の支払い、また予備的には国家賠償法に基づく損害賠償金と遅延損害金の支払いを求めて提訴したわけだが、第一審の東京地裁が納税者側の主張を全て棄却したことから、その判決内容を不服とした納税者が更に原審判決の取消しを求めて提訴したという事案である。 これに対して控訴審も、原審の判決内容を支持して、納税者側の主張はいずれも理由がないと棄却した。その理由として、技術士の行う業務と同一の業務とは、技術士法2条1項が技術士の行う業務として定義する「科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」を意味すると一義的に解することができ、これと同旨の所得税基本通達204-18は正当であると判示。 その上で、源泉徴収の対象となる業務の該当性をその業務の具体的な内容から合理的かつ明確に判断することができるため、課税要件明確主義に反するとはいえないと指摘。また、無資格者に発注した業務すなわち数量積算業務は、基本的な知識と経験で行うことができる業務ではなく、高等の専門的応用能力を必要とする事項についての業務に該当するものであるから、技術士の行う業務と同一の業務に該当することは原審の説示どおりであるとも指摘した。 結局、数量積算業務は、技術士の行う業務のうちの建築積算業務に含まれる業務であるものの、その業務の内容が技術士の行う業務に該当して報酬を支払う対象とされる以上、それが技術士の行う業務のうち特定の範囲の業務にすぎないからといって源泉徴収義務を免れることにはならないと判示して、控訴を棄却している。(2019.06.26東京高裁判決、誤納金還付請求控訴事件)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2020.02.17 16:35:18