原処分庁採用の推計方法には一応の合理性があると判断、棄却
原処分庁が採用した推計方法と納税者が主張する推計方法のいずれに合理性があるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、原処分庁側が採用した推計方法には一応の合理性があると判断、審査請求を棄却した。
この事件は、料理店と不動産貸付業を営む個人事業者の事業所得の金額及び課税資産の譲渡等の対価の額を、原処分庁が推計により算出して所得税等及び消費税等の更正処分等をしてきたことから、納税者自らが推計する方法により算出した事業所得の金額等の方が実額に近似すると主張して、原処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。
つまり納税者側は、昼営業に係る注文伝票1枚当たりの単価(昼営業伝票単価)に注文伝票の購入枚数から客の注文等を記載する以外に使用した注文伝票の枚数(伝票ロス分)を控除した枚数を乗じて売上金額を算出するという原処分庁が採用した推計方法には合理性がない旨主張して、原処分の一部取消しを求めたわけだ。
これに対して裁決は、1)昼営業伝票単価を推計の基礎数値に用いることは、事業専従者が主に昼営業の売上げを計上しないものとして昼営業に係る注文伝票の一部をレジ入力せずに破棄し、昼営業に係る来客者数が夜営業に係る来客者数を上回る事業の実態を反映している、2)昼営業伝票単価及び注文伝票の購入枚数は、いずれもその事業における正常な業務の遂行のために作成された資料から正確に把握される、3)客への飲食物の提供方法である店内飲食、持帰り及び弁当販売の3つの形態のいずれについても必ず注文伝票が作成されており、注文伝票の使用枚数と売上金額とは高い相関関係がある――こと等を認定した上で、原処分庁が採用した推計方法は一応の合理性を有すると判断。
また納税者側が、おしぼりのレンタル本数及び弁当箱の購入個数から客に提供する以外の用途に使用する数量を控除した数量に、客単価を乗じて売上金額を算出するという推計方法のほうが真実の所得金額に近似する旨主張したことに対しても、1)その推計方法は夜営業に係る来客者数よりも昼営業に係る来客者数のほうが多いという事業の実態を反映するものではなく、2)おしぼりのレンタル本数及び弁当箱の購入数量について、客に提供する以外の用途に使用する数量を認定するに足る具体的な証拠はなく見積りにより算出している、さらに3)おしぼりの調理使用分について使用方法が変更されている――ことからすると、数値の正確性・連続性に欠けるおしぼりのレンタル本数及び弁当箱の購入数量を推計の基礎とすることはできないと認定した。
結局、納税者側が主張する推計方法のほうが真実の所得金額に近似するとはいえないという判断から、審査請求を棄却した。
(国税不服審判所2019.04.24裁決)
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