漢方薬等の購入費用は医療費控除の対象外と判断、棄却
生計を一にする母親の治療目的のために購入した漢方薬等の購入費用が医療費控除の対象となる医療費に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、購入した4種類の漢方薬等はいずれも「治療又は療養に必要な医薬品」に該当しないことから、その購入費用は医療費控除の対象となる医療費には該当しないと判断、審査請求を棄却した。
この事件は、納税者である審査請求人が、生計を一にする母親の治療のために、ウェブショップ等を通じて購入した4種類の漢方薬等の購入費用が医療費控除の対象になると判断して、所得税等の確定申告をしたのが発端。この申告に対して原処分庁が、漢方薬等の購入費用は医療費控除の対象となる医療費には該当しないなどと判断して申告の内容を否認、所得税等の更正処分等をしてきたことから、納税者側が原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。
請求人側は、購入した4種の漢方薬等は、親族が治療に用いたものとして、いずれも所得税法73条2項及び所得税法施行令207条2号が規定する「治療又は療養に必要な医薬品」に該当し、その購入費用は医療費控除の対象となる医療費に該当する旨主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。
これに対して裁決はまず、所得税法及び同法施行令が定める医薬品は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(いわゆる薬機法)2条1項に規定された医薬品をいうものと解するのが相当であるという解釈を示した上で、購入した漢方薬等のうちの2種の製品は、製薬会社が健康補助食品として製造販売し、その使用目的が食用に限定されたものであること等から、医薬品には該当しないと指摘。
また、その他の2種の製品は、薬機法2条1項が規定する医薬品には該当するものの、虚弱体質や肉体疲労の場合などの滋養強壮を効能効果として、疲労回復や健康維持のために用いられ、医師の処方せんがなくても薬局等で購入可能なものであると認定するとともに、請求人が提出した資料並びに審判所の調査及び審理の結果によれば、これらの医薬品は、請求人の親族の治療又は療養に必要な医薬品ではなかったというべきであると判断した。
結局、請求人が購入した漢方薬等は、いずれも所得税法73条及び同法施行令207条が規定する「治療又は療養に必要な医薬品」に該当しないことから、漢方等の購入費用は医療費控除の対象となる医療費には該当しないと判断して、審査請求を棄却した。
(国税不服審判所2019.05.22裁決)
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)