行為の意味を理解しながら故意に事実を歪曲したと認定、棄却
過去の事業年度における仮装経理について経理を修正せず、その事業年度の実際の材料仕入高を水増しした材料仕入高により行った帳簿書類の作成が仮装に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、行為の意味を理解しながら故意に事実をわい曲したものということができ、仮装したものというべきであるから、隠ぺい又は仮装に該当すると判断、審査請求を棄却した。
この事件は、生コン製造販売業を営む審査請求人の法人税等に対して、原処分庁が実際の取引がないにもかかわらず恣意的な金額を各事業年度の材料仕入れとしたことは、隠ぺい又は仮装の行為に該当すると判断して更正処分等を行ってきたことから、請求人がその会計処理は過去の事業年度における仮装経理に基づく過大申告を是正する目的で行った修正の経理であり、隠ぺい又は仮装に該当する事実はないなどと主張して、原処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。
つまり請求人側は、重加算税取扱指針第1の1が例示する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺい又は仮装」のいずれの事実もないと主張するとともに、過去の事業年度における実際にあった材料仕入れを各事業年度に戻入処理として計上したのであり、架空の材料仕入れを計上していないと主張。さらに、 この戻入処理は、法人税法129条の規定に基づく過去の事業年度における仮装経理の修正の経理であるとも主張して原処分の取消しを求めたわけだ。
この主張に対して裁決は、請求人の代表取締役は、各事業年度において実際とは異なる水増しした材料仕入高により帳簿書類が作成されていたことを認識していたと認定。その上で、その認識の下で請求人が水増しした材料仕入高を帳簿書類に計上したことは、行為の意味を理解しながら故意に事実をわい曲したものということができ、仮装したものであるというべきであるから、国税通則法68条1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」場合に該当すると判断、審査請求を棄却した。
(2019.03.01国税不服審判所裁決)
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)