カジノの勝ち分 海外客から所得税を源泉徴収 チップ手渡しの税逃れ防止
国内に設置されるカジノで海外から訪れた利用客が得た利益について、政府は所得税の源泉徴収を行う方向で具体的な制度設計に入った。カジノ事業者に対し、利用客のチップ購入履歴やゲームでの勝敗の記録・保存も求め、課税漏れを防ぐ。2020年度税制改正大綱に方針を盛り込み、具体案を検討する。
政府が観光振興策の一環として推進するカジノを含む統合型リゾート施設(IR)は21年以降、最大3カ所で認可される見通しで、横浜市、大阪府・市などの自治体が誘致を表明している。来年春以降に施設や事業の詳細が決まる予定で、税制面の対応が急務となっていた。
訪日観光客が競馬や競輪、カジノなどギャンブルで得た利益は「一時所得」として扱われる。カジノの場合、ゲームをするために購入するチップの代金と、退場時にチップを換金した払戻金の差額が課税対象になる。ただ勝敗など詳しい利用記録がなければ、カジノ内で知人同士がチップを受け渡して利益がなかったように見せかける課税逃れが起きかねない。国内客に比べても、訪日客は出国後に税務調査ができなくなる恐れがあるため、源泉徴収の仕組みを導入して課税漏れをなくす狙いだ。すでに米国や韓国でも、源泉徴収の仕組みが採用されている。
カジノ誘致を目指す自治体は、人口減少や不況でひっ迫する税収の新たな財源にしたい考えがある。たとえば横浜市は、IRによって法人市民税や固定資産税、都市計画税など年間820億円~1200億円の増収効果があると試算している。大阪府も17年の調査報告書で、カジノ事業者からの納付金なども含め1200億円の税収増が見込めるとのデータをまとめた。ただしギャンブル依存症の増加や治安悪化、街のイメージ低下といったカジノが及ぼす悪影響への懸念は消えておらず、住民への意向確認や丁寧な説明が求められる。
提供元:エヌピー通信社